子どもを含む大量の個人情報が教育産業の大手企業から流出していたことがわかった。

 自分と家族の情報が誰の手にあり、どう使われるかわからない。デジタル社会の不安をあおる企業の失態である。

 情報管理を誤ったベネッセホールディングスの責任は重い。警察に全面協力し、経路の解明と再発防止策を急ぐべきだ。

 流出データは確認されただけで約760万件、最大で約2千万件におよぶ恐れがある。

 企業からの個人情報の流出はこれに限った話ではない。業種を問わず不正があとを絶たないのは、顧客情報の価値が相対的に上がっているからだ。

 個人情報保護法の施行や、住民基本台帳の営利目的での閲覧の禁止などで、個人情報の入手が難しくなっている。

 とりわけ教育産業界では、少子化で競争が激化する一方、親が1人の子どもにかけるお金は増える傾向にある。子どもをもつ家庭に確実に接触でき、成長にあわせて長く使える情報は、のどから手が出るほどほしい。

 そうしたさまざまな個人情報を扱っているのが名簿業者だ。その実態は不透明で、今回のように違法な形で流出したデータが出回ることも少なくない。

 これまでの個人情報保護法の改正をめぐる政府の論議の中でも、名簿業者の問題はとりあげられてきた。

 業者の実態の把握や、彼らが集めるデータの活用はどこまで認められるべきか。今後そうしたルール化を検討する必要があろう。

 名簿を買う側の責任も当然問われる。ベネッセの情報を使って自社の勧誘案内を送っていたジャストシステムは、ベネッセから漏れた情報とは認識していなかった旨の釈明をした。

 だが、自らがIT事業者であり、電子化された情報管理の機微を人一倍知るはずの企業だ。

 それなのに、出どころ不明のデータを安易に業者から買って使っていた事実は、この会社自身の情報管理に対する顧客の不信感を招きかねない。

 今回の不正は、勧誘案内を送られた親たちがツイッターなどで情報交換し、次々に問い合わせたことから発覚した。自ら経路を追及して名簿業者を突き止め、公開した親もいる。

 情報を軽んずれば、情報の力で反撃される。IT時代だからこそ、企業はデータの扱い方次第でしっぺ返しを受ける。

 デジタル社会の情報管理はこれからますます難しさを増す。企業が果たすべき責任と義務をいま一度考えてもらいたい。