■「彼に会いたくて」「義母に似てるから」
わが子にお菓子をつまみ食いされたから-。大人げない物言いは驚くばかりだが、同じような幼稚な動機で子供を虐待したりするケースは、ほかにもある。
今年3月、JR新大阪駅(大阪市)のトイレに1歳の長女を置き去りにしたとして、母親が保護責任者遺棄容疑で逮捕されたが、調べに「彼氏に会いたくて置いて行った」と供述。その後、不起訴になったが、女児と離れて暮らすことを余儀なくされたという。
また、奈良県では平成22年3月、当時5歳の男児を餓死させる事件があった。両親が保護責任者遺棄致死罪に問われたが、母親の裁判員裁判の公判では検察側が冒頭陳述で「男児の表情や声が、折り合いの悪かったしゅうとめに似ていると感じたため、十分な食事を与えなくなった」と主張。母親は懲役9年6月の実刑判決を宣告された。
なぜ、こうした親が後を絶たないのか。子供を襲う虐待をどうすれば防げるのだろうか。
関西学院大の才村純教授(児童福祉論)は前提として「昔と違って今の家庭は地域的に孤立している」とした上で、「昔は子供がいたりすれば、近所の人が集まり、あやしたりしつけたりした。しかし、今はそういう機会がないので、子供のしつけ方を学ぶ経験が少ない」と指摘する。
こうした状況を改善するためとして「ペアレント・トレーニングなどが必要」と提言。才村教授によると、ペアレント・トレーニングは、親に子供への正しいしつけを身に付けさせるもので、子供のほめ方や自身の感情をコントロールする方法などを学ぶ。海外では虐待をしてしまう親の更生プログラムにも取り入れられているという。
一方、大阪市の児童相談所長を務めたことのある花園大の津崎哲郎特任教授(児童福祉論)も同様の意見だ。「十分に親になるためのプロセスを積まないまま、育児を始めた未熟な親があまりにも多い」と分析し、「学校で乳児とふれあう体験学習を充実させるなどの対策を取ることが必要ではないか」と話している。