大文字山を食べる

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ヨウシュヤマゴボウの実を食べた

大雪山縦走の連載途中だが、ちょっとブレイク。

   ×  ×  ×

晩夏から秋になると、ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡)の実が黒紫色に熟す。
道路脇や石垣など、どこにでも生えるので、よく目につく。
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木の実なんかを食べるのを趣味としている者なら、誰でも一度は惹かれてしまう。
無論、わたしもその一人だ。
道を歩いていて何度もハッとさせられた。
そういう「目」になっているのだ。

しかし、ヨウシュヤマゴボウが「有毒植物」だということは有名な話。
街中の植物について書いた本ならば、だいたい指摘してある。
その知識があったから、ヨウシュヤマゴボウの実には手を出さなかった。
いや、はるか昔に一粒くらいは食べたことがあるはずだ。
だが、どんなのだったか忘れてしまった。

   ×  ×  ×

盛口満さん『野菜探検記』(木魂社、2009年)に、ヨウシュヤマゴボウの実を食べるエピソードが出てくる。
「キタガワ先生」なる人が出てきて、実を食べる。

はじめは鳥のように丸呑みしたのだという。
別になんともありませんでした
とのことらしい。

次に、ヨウシュヤマゴボウの実を噛み潰しながら食べたのだそうだ。
10個まではとりたてて何ということもなかったらしい。
しかし、次の一個がどうしても食べられません。口に運ぼうと思っても、手がとまって、そこから動かないんです
・・・ということだった。

この
「口に運ぼうと思っても、手がとまって、そこから動かない」
というのに興味をそそられた。

盛口さんは、キタガワ氏に対し
「実践精神はおそるべしだ」
と述べられながらも、
「決してまねをしてはいけません」
と注意書きもされている。
やれやれ、「してはいけません」だの、「無理だ」「無駄だ」だの…そんな言葉で、人は わたしをけしかける。
「いけない」と言われたら、余計にやりたくなるじゃないか!

   ×  ×  ×

8月下旬、家のすぐ近くにヨウシュヤマゴボウを見つけた。
イメージ 2

まだ実は熟していない。
部分的に熟している部分もあるが…
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まったくこれから…という房もある。
イメージ 3

実験は、もう少し待とう。

   ×  ×  ×

猛烈に忙しい仕事を片付けたり、北海道旅行に出かけたりして、やっと余裕ができてから、
「さぁ、そろそろいいだろう。ヨウシュヤマゴボウはどうなっているかな?」
と思って見に行った。

9月24日。
イメージ 5

目当てにしていたヨウシュヤマゴボウは、根元から切られていた。バッサリと。
わたし自身の計画までバッサリと断ち切られてしまったようだ。

なぁに、ここはガレージの隅だから排ガスがかかっているし、低い所にあるから犬のオシッコだってかかっていた。
あんまり食べたくなかったのさ。

   ×  ×  ×

さて、ヨウシュヤマゴボウくらいどこにでもあるはずだ…と思って、少しウロウロしたら、ある家の石垣に生えていた。
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犬のオシッコがかからない高さにある。

まだこれからの実もある。
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が、大半はしっかりと黒紫色に熟している。
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これを見て「食べてみたい」と思うほうが素直だと思う。
本当に食べられるかどうかは、あくまで食べてみてからの結果論である。

さぁ、本当に10粒食べると「手が止まって食べられない」ようになるか?
食べてみる。もちろん、噛みつぶしながらだ。
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うむ。
とりたてて、毒々しい味はしない。
むしろ、ほんのりと甘い。
10段階評価なら、5〜6くらいの「まぁまぁ食べられる」のレベルだ。
これは、人間が美味しいものばかり食べているからであって、鳥や動物からしたら十分に美味しいのではないだろうか?
(野生の山ブドウなんかでも、人間の味覚からすると それほど「美味しい」ものではないが、動物にとっては御馳走だ)

2粒・3粒…6・7・8…と食べていく。
5粒目以降は、わずかだがエグ味を感じ始める。「後味が悪い」というヤツだ。
で、10粒食べた。
別に何ともない。まだ食べようと思えば食べられる。
「手が止まって食べられない」というようなことはない。
しかし、「もっと食べたい」
という欲求がわいてこない。
たしかに、食べて食べられないことはないし、「実験」だと思って食べているから食べられるが、正直、飽きてくるのだ。

で、11粒目を食べて記録更新して止めた。
しばらくして、舌がササクレ立ち、すこしシビレてくる。

   ×  ×  ×

ヨウシュヤマゴボウの毒成分はフィトラッカトキシン(phytolaccatoxin)とフィトラッキゲニン(phytolaccigenin)というらしい。
誤食すると嘔吐・下痢、さらに中枢神経麻痺から痙攣・意識障害が生じ、最悪の場合には呼吸障害や心臓麻痺により死に至るという。
全草が毒なのだが、果実については「無毒」「有毒」「毒がもっとも少ない」などサイトや本によってまちまちだ。
わたしは、舌のしびれからして「ほとんど無毒に近いが、無毒とは言えない」と結論したい。

   ×  ×  ×

さて、盛口満さん『野菜探検記』にもどる。
ヨウシュヤマゴボウを、丸呑みしたら何ともなくて、噛みつぶしたら「手が止まってしまう」ことについて、盛口さんは次のように説明される。
鳥のように丸呑みすると毒が働かず、哺乳類のように噛み潰して食べると毒がきく。
これは実の中のタネが壊されないようにするための工夫だろう。
つまり、鳥は実を丸呑みしてタネを散布してくれるが、哺乳動物はタネを噛み潰してしまって散布の役にならない。
ヨウシュヤマゴボウにとって、哺乳動物に実を食べられることは何のメリットもなく、デメリットでしかないからだ、ということなのだ。

しかし、これには疑問がある。
ヨウシュヤマゴボウのタネは、こんなに小さい。
イメージ 10

噛み潰してしまうほどの大きさではない。
盛口さん自身も、
哺乳類散布型の実では、タネが小さく、実が噛み砕かれた場合でもタネが壊されにくくなっている。
と書いておられる(例として、イチゴがあげられる)。

もう一つの疑問は、鳥が惹きつけられるのは赤色で、黒〜紫色は鳥には目立たないのではないか?ということだ。

毒の少なさ、ほのかな甘み…ヨウシュヤマゴボウは、「おいしい果物」に進化する一歩手前の段階ではないだろうか?

   ×  ×  ×

最後に、ヨウシュヤマゴボウの花を見た。
イメージ 11

こんなに可愛い花だとは今まで気がつかなかった。

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閉じる コメント(18)

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初めまして、ランダムからです。
途中飛ばしましたが、興味深く読ませていただきました。
家の前に生えていますが、実が落ちたところから沢山発芽するので、大きくなる前に引き抜きますが、一本だけ根を張っています。
野良バトがよくここから飛んで行くのを見かけますので、好物なのかと思っています(鳥には害はないのでしょうね)。
以前、近所の人が(70歳くらいの人)“昔は葉っぱを天ぷらにして食べたよ”と言っていました。
食料のない時代には、食した記述もあるようです。

2010/9/27(月) 午後 1:01 ネコのしもべ

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庭に生えて居るのを見た事が有ります。美味し実でしたが、其れは毒よと言われて主人が抜いた事を思い出しました。

2010/9/27(月) 午後 5:58 [ ]

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☆ネコのしもべさん。
はじめまして。コメントありがとうございます。
どうやら、ヨウシュヤマゴボウはわずかな土にでもすぐに発芽する草で、雑草としては優等生らしいです。
鳥は赤い実、虫は青い実…と思っていましたが、なるほど鳩が食べますか!
アメリカでは奴隷制時代に黒人が食べていたそうですが、日本でも葉っぱを天ぷらにしていたとは驚きです。
高温で無毒化されるのでしょうか。
野菜と有害植物の“きわきわ”に位置しているようですね。

2010/9/27(月) 午後 11:55 安田陽介

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◇手毬さん。
昔のキュウリやピーマンは、今のものよりもエグ味があったごとく、野菜(植物)でも多かれ少なかれ毒をもっていますね。
そのエグ味を「風味」として楽しんでいる処があります。
玉ネギ・パセリ・セロリ…のピリピリ感がそうです。
子どもの野菜嫌いは、この「エグ味=毒」を本能的に拒絶しているものです。
「毒」が好まれるか嫌われるか…とても微妙ですね。

2010/9/27(月) 午後 11:55 安田陽介

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毒草の本全部に乗っていますね。
毒については、キノコもそうですが、まんべんなくアタルのとそうでないのとあるように、たまたまセーフだっただけかもしれません。
ハラハラ読み、今頃どうなっているだろうかとまだ心配です。

2010/9/28(火) 午前 6:21 かかまる

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☆かかまるさん。
キノコは、食べてから何時間もしてから中毒したりして、一体なんのために毒があるのか分かりませんが、木の実は「これはオマエたちの食べ物じゃねぇ!」という警告のために毒をもちます。
なので、食べた瞬間にエグ味・渋味を感じて拒絶反応をおこさせるべきで、逆に食べた時に大して拒絶反応がおこらなければ、「後から毒が効いてくる」ということはないでしょう。
ただ、「まんべんなく」or notの問題はたしかにあります。
この問題については、テンナンショウ(マムシグサ)の実で実験してみたいと予定しております。

2010/9/28(火) 午後 2:22 安田陽介

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テンナンショウ??????

オネガイダカラヤメテクダサイ・・・

2010/9/28(火) 午後 6:14 かかまる

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◇かかまるさん。
またまた…
そうやって、けしかける!!

2010/9/28(火) 午後 11:13 安田陽介

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幼児なら2〜3房で致命的、大人であれば大量に摂取しない限り死に至る場合は少ないのです。しかし、死亡例もあるので注意しましょう。毒を甘く見てはいけません。 削除

2012/1/28(土) 午後 10:14 [ 毒草愛好家 ]

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☆毒草愛好家さん。
人も甘く見てはいけませんね。

2012/1/29(日) 午前 7:30 安田陽介

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古い記事であるにもかかわらず、気になってコメントさせて頂きました。
いつもこの実のなる木、時々目にしていたんですよね。
独特の色に目を引かれて、名称と独の有無について調べていてここに流れ着きました。
そうですか、やはり怖いですね。ブドウみたいだからと興味本位で口にしないでよかったです。
でも、「むしろほんのり甘い」という文に思わずごくり。
ちょっと興味が湧きました。
長文のお目汚し、失礼いたしました。 削除

2013/8/24(土) 午前 4:15 [ 学生 ]

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☆学生さん。
嫌でも目につく木ですね。
しかし、立ち止まってじっくり見ることは少ないのではないでしょうか?
かく言うわたしがそうでした。
ちょっと口に入れるくらいなら大丈夫ですよ。
まずかったら吐き出せば済むことですし。

2013/8/24(土) 午後 10:33 安田陽介

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面白い記事有難うございます。毒はあっても実が次第に色づいていく変化は神秘的で美しいですね。 削除

2013/8/28(水) 午前 8:14 [ なな ]

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☆ななさん。
はじめまして。
コメントありがとうございます。
実が色づくのも神秘的ですが、花も可愛いですね。

2013/8/28(水) 午後 8:16 安田陽介

さっき喰ってしまったw
種もジャリジャリとw
wiki見たら怖くなったけど大丈夫そうだな

2013/9/10(火) 午前 9:44 [ bap*rai* ]

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☆bap*rai* さん。
はじめまして。
食べられた勇気はすごいです。
wikiは参考程度に。信用しすぎてはいけません。

2013/9/11(水) 午前 0:15 安田陽介

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その後下痢とか腹痛にならなかったですか?経過を本文に追記して欲しいです。 削除

2014/6/1(日) 午前 0:30 [ toorisugari ]

☆toorisugariさん。
このブログ全体が事後経過です。
下痢とかになったら翌日・翌々日の記事に書いています。

2014/6/2(月) 午後 3:35 安田陽介

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