サムスン:成長に陰り…ウォン高、中国系の猛追も

毎日新聞 2014年07月11日 21時32分(最終更新 07月11日 22時27分)

 急成長を続けてきた韓国サムスン電子の勢いに陰りが見え始めた。ウォン高に加え、同社の稼ぎ頭であるスマートフォン(スマホ)が中国企業に追い上げられるなど事業環境が激変しているためだ。スマホに続く成長事業を見いだせていないほか、絶対的オーナーとして君臨してきた李健熙(イ・ゴンヒ)会長(72)の健康問題も懸念材料。世界最大級の電機メーカーとなったサムスンは大きな転換点に差し掛かっている。【高橋直純、ソウル澤田克己】

 「スマホ市場の伸び悩みは予測されていた。これから苦労するだろう」。国内の大手電機メーカー幹部はライバル、サムスン減速の感想を漏らす。

 サムスンが8日に発表した2014年4〜6月期の連結業績(速報)は、本業のもうけを示す営業利益が前年同期比24.4%減の約7兆2000億ウォン(約7200億円)にとどまった。前年割れは3四半期連続。売上高も同約9.5%減の約52兆ウォン(5兆2000億円)で、9年ぶりに減収減益となった。

 不振の要因は主力事業であるスマホの収益悪化とウォン高。サムスンは利益の約7割をスマホなどのIT機器から稼いでいる。米調査会社IDCによると、13年の世界のスマホ市場は全体で前年比4割増と大きく伸びたが、先進国では需要が一巡。14年は2割増にとどまる見通しだ。

 新興国では小米科技(シャオミ)や華為技術(ファーウェイ)などの中国メーカーが台頭。1000元(1万6000円)以下の低価格スマホを中心に攻勢をかけている。低価格スマホに対応するため、広告費や販売奨励費がかさみ、収益力の低下を招いた。

 東レ経営研究所の永井知美シニアアナリストは「部品を組み合わせて作る家電やデジタル機器は、差別化が難しく、価格競争になりがちで、収益性の低下は避けられない」と指摘している。

 スマホに頼る収益構造から脱却を図るため、腕時計のように身につけるウエアラブル端末や、家電をつなぎ、電力消費を抑えるスマートホーム事業などに力を入れる方針だが、国内外での競争が激しく、「ポスト・スマホ」に成長できる保証はない。

 KDB大宇証券の洪性国(ホン・ソングク)リサーチセンター長は「7〜9月期は積み上がった在庫が減るため、短期的には大きな心配はないが、長期的には新たな成長エンジンが必要」との評価だ。

 ◇「会長不在」も懸念材料

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