ウォールストリート・ジャーナルによるとアリババ(ティッカーシンボル:BABA)が一部の関係者に7月末にも新規株式公開(IPO)のロードショウをキックオフする準備があると通知したそうです。つまりロードショウに出るのは8月というわけです。

なお、これはあくまでも暫定的なスケジュールで、市場環境が悪ければ先送りされます。

ストーリー面でも、数字的にもアリババはピカピカの案件であり、その意味では僕もこの株には大いに期待しています。

でも……

新規株式公開に際しての、これまでの実務の進め方を観察すると(大丈夫、この会社?)と首を傾げることにしばしば遭遇します。

まず8月にIPOロードショウをキックオフするというのは、馬鹿げたアイデアです。

なぜならバイサイドのシニア・ファンドマネージャーは皆、夏休みで不在にしており、IPOに応募するかどうかの意思決定をする人間がオフィスに居ないからです。

これは喩えて言えば外人さんがゴールデンウイークに来日して、「折角来たのだから取引先に会わせろ」と無理を言うのと同じです。

このIPOではアリババが最後まで幹事証券を激しく競争させています。

それ自体は、別に悪いことではないけれど、投資銀行の側ではアリババの歓心を買うため、こういう非常識なスケジュール設定についてグサッと釘を刺す奴がいないのだと思います。

幹事構成の話をすれば、現在の売出目論見書の序列は:

クレディスイス
ドイチェバンク
ゴールドマンサックス
JPモルガン
モルガンスタンレー
シティ


の順です。

これは、ダサい!

幾ら昔からクレディスイスと幹事関係があるとはいえ、クレディスイスのネット株での引き受け実績に、みるべきものはありません。

「史上最大のIPO」を仕切るのが、クレディスイスやドイチェなどのB級のアンダーライターだというのは、喩えて言えば巨大案件で三洋証券を主幹事に立てるような愚行。見る人が見れば、陰でこっそり哄笑しているはずです。

アンダーライティング・フィーを値切られ、実績や実力に関係なく縁故で幹事が決められ、引受プロセスを通じて、一度も幹事責任の所在が明確にされていないのでは、ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーとしても親身になってマジなアドバイスをする気が失せると思うのです。

繰り返し言うと、アリババは数字的にはピカピカであり、「成功して当然」の案件です。

でもそれにあぐらをかいた、発行体側の横着な態度がプンプン臭ってきます。

それほどカンタンじゃないと思いますよ、これだけの巨大案件を無事上場させるのは。