2014年6月23日(月) 東奥日報 特集

断面2014

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■ 都議会やじ問題/追い詰められ“自白”

 世間をあぜんとさせた東京都議会のセクハラやじの発言主が23日、ようやく名乗り出た。国内外の批判の高まりに追い詰められた自民党都議団は、鈴木章浩(すずき・あきひろ)都議(51)だけとして幕引きを図った。女性の活躍を成長戦略に掲げ、国政への波及を懸念する安倍政権には安堵(あんど)の表情も。だが別のやじ発言者は特定されず真相は不明。問題の火種はくすぶる。

 ▽責任転嫁

 「私の発言でご迷惑をお掛けしたことをおわび申し上げます」

 23日午後の都議会。報道陣のカメラのフラッシュを浴びながら、神妙な鈴木都議が硬い表情の塩村文夏(しおむら・あやか)都議(35)に頭を下げた。

 問題が発覚した当初は危機感が薄かった自民党都議団。吉原修(よしわら・おさむ)幹事長が発言のあった翌日の19日から聞き取り調査に乗り出したが、都議たちはだんまりを決め込んだ。「塩村都議側が自分たちで調べるべきだ」(都議の一人)と責任転嫁の声も上がったほどだった。

 楽観ムードが一変したのは、世論の反発と海外からの批判の嵐だ。

 インターネット上では、発言者と名指しされた議員に非難が殺到。欧米メディアが「女性議員が性差別的な暴言を受ける」(英紙ガーディアン)、「性差別の噴出」(米CNNテレビ)と相次いで報じた。

 塩村都議が所属するみんなの党は発言者を特定するため、声紋分析の準備を進めることを表明。外堀が埋まる中、鈴木都議が吉原幹事長に発言者と申し出たのは、23日午前10時半すぎだった。

 ▽最低水準

 海外メディアは、23日の“出頭”も敏感に反応。背景には、日本女性の社会進出が遅れているという現状があるためだ。

 ジュネーブに本部を置く国際組織「列国議会同盟」が各国の下院(日本は衆議院)に占める女性の割合を調べた結果、日本は5月1日時点で約8%にとどまり、調査対象の189カ国中132位。先進国の中で最低水準となっている。

 AP通信は「女性登用を目指す安倍首相の取り組みや五輪開催地としての東京のイメージを損ねることになりかねない」と報道し、中国国営通信の新華社も同調。ロイター通信も、積極的な女性登用を含む成長戦略が24日に閣議決定される直前にやじがあったことに注目。自民党幹部をいら立たせたと指摘した。

 ▽苦情

 一方の永田町。自民党本部では「首相の成長戦略を否定しかねない発言だ」(野田聖子総務会長)、「自民党のおごりと受け取られる」(党幹部)との声が上がっていたが、鈴木都議が名乗り出たことに安堵(あんど)感が漂った。

 地方議会の問題とはいえ、2020年に東京五輪・パラリンピック開催を控えるお膝元での不祥事に「政権にも飛び火しかねない」(閣僚経験者)との危機意識があった。

 21日のテレビ番組で「誰であれ『自分でした』と言っておわびすべきだ」と憤っていた石破茂幹事長は23日「党として襟を正し(少子化問題などに)強力に取り組む」と強調、火消しに躍起になった。ただ幕引きを図る都議団幹部の事務所には23日午後になっても「このまま終わらせるつもりか」と苦情の電話が殺到しており、問題を収束できるかは不明だ。

 都選出のある自民党衆院議員は「(子どもが産めないのかとの)発言者もセットで出てきてくれれば(党にとって)よかった。悪質な方の発言者が後で出てくればさらに印象が悪くなる」と本音を漏らした。

(共同通信社)




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