80年代に存在したフォントが人知れず消えたワケ
なにこのフォント、かわいいんですけど。
アップル、Trapper Keeper(注:米国のバインダのブランド)にリーボック。1980年代を代表する3つの有名ブランドは、同じフォントを使っていた企業同士でもありました。では、なぜその共通するフォントはヘルベチカ(Helvetica)のような定番フォントにならなかったのでしょうか?
Motter Tekturaと呼ばれるこのフォントにネタ元Fonts In UseとBrandNewが注目しています。これは、1975年にオーストラリア人デザイナーのOthmar Motterさん(2010年没)が作ったもので、70年代後半から80年代にかけてアップルの初期のロゴとして(また、リーボックでも)使われていたので、見覚えある人もいるのではないでしょうか。Trapper Keeperは今も引き続き使っていますね。
Tekturaは、アップルのアイデンティティ形成において重要な役割を果たしました。というのも、同社が企業ロゴにこのフォントを採用したときに、リンゴのかじり跡をTekturaの丸みがかった「a」の字形にフィットするように仕上げたそうですよ。その後フォントがTekturaでなくなっても、かじり跡のカーヴは変わりませんでした。
実は初代Macintosh OS向けにデザインしされたフォントのシカゴ(Chicago)もTekturaを真似ているといえます。Tekturaは、スティーブ・ジョブズの1979年の名刺に使われていたこともありました。
フォント業界ではMotterさんもフォントのTekturaも聞き慣れた名前かもしれませんが、一般的には知られていませんでした。それでもヘルベチカやアリアル(Arial)といった有名なフォントのようにTekturaも初期の消費者向けの技術(とファイルバインダー)で大きな役割を果たしたのです。では何が起こったのでしょう? 理由はいくつかあります。
Fonts In UseはTekturaには認可されたデジタル書体がないことを指摘していますが、それなら納得ですね。1975年や79年だと、まだ写真植字で刷られているフォントもありました。Tekturaはその時代の終盤に誕生し、デジタル化されなかったようです。さらに、Font Feed はMotterさんが成功ののちフォントデザインから遠ざかり、ロゴ作りにフォーカスしていたという要因も指摘しています。
しかし根底にあるのは、そんな要因よりもむしろ終わることのなく回る「好まれるデザイン」という輪なのかもしれません。1957年にデザインされたヘルベチカが復活したのは、この10年ほどのことです。なにしろ「レトロ」なデザインの人気は周期的にやってくるんです。先週、Trapper Keeper は学校用のバインダを復活させることを発表しました。もしかしたらTektura自身が復活する時も近いのかもしれませんね。
image by Fancy
source: BrandNew
Kelsey Campbell-Dollaghan - Gizmodo US[原文]
(たもり)
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