猫カフェ:癒やされる?夜の接客 「延長は22時まで」
2014年07月11日
午後10時まで営業している猫カフェ「猫のいる休憩所299」=東京都豊島区で2014年6月27日午後9時10分、竹内幹撮影
◇「動物愛護に反する」に「夜行性で問題ない」
猫と触れ合える「猫カフェ」の夜間営業を巡り、夜遅くまで楽しみたい客や店側と、猫の健康を心配する動物愛護団体などとの間で論争が続いている。環境省は猫のストレス調査を実施したが結論が出ず、動物愛護法の特例として「午後10時まで」営業を認める規定を、6月から2年間延長した。猫の「接客」の実態を探りに、猫カフェをのぞいた。【阿部周一】
東京・池袋のビル5階にある「猫の居る休憩所299(にくきゅう)」。平日午後8時過ぎに訪ねると、ソファや書棚が置かれた静かな店内はカップルや会社員ら約30人でにぎわっていた。通常料金は10分200円(飲み物代は別)、客層は20~30代が中心だ。17匹いる猫を抱いたり、隣に寝そべらせたりしながら、本を読んだり談笑したり。猫たちは気が向かないとふいと移動するなど、気ままに振る舞っていた。
「自宅で飼えないので、仕事の後も開いている猫カフェはありがたい。疲れが癒やされます」。毎週来店するという常連の男性会社員(42)はそう言って、おもちゃで猫と遊んだ。
店の営業時間は午前11時~午後10時だ。オーナーの花田憲昌さん(43)は「ここでは猫たちもそれぞれのペースで過ごす。夜は猫が活発になる時間帯。狭いケージに入れておく方がストレスがかかる」と話す。
夜間営業論争の始まりは2年前にさかのぼる。環境省は2012年、動物愛護法の省令で、ペットショップなどでの犬や猫の展示を午前8時~午後8時と定めた。24時間営業を売りにするペットショップが登場し、愛護団体などから犬猫の健康に与える悪影響を懸念する声が高まっていた。この措置に猫カフェの経営者らが「夜行性の猫を夜間、閉じ込めるのは逆にストレスを高める」「夜は利用客が多い」と反発。同省は専門家会合を開き、経過措置として14年5月までの2年間、猫カフェに限って1歳以上の猫の午後10時までの展示を認め、その間に規制の是非を検証することにした。
同省は昨年、猫カフェ9店で猫のストレス調査に乗りだした。首輪に活動量を測る装置を付け1日の平均を調べたところ、午後8時に閉まる店と午後10時までの店でほとんど差がなく、必ずしも「猫は夜間に活発化する」とは裏付けられなかった。一方、猫の尿を採取しストレス指標となるホルモン濃度も調べたが、三つある指標のいずれにも明確な差は出なかった。
この結果を基に専門家が再び議論したが「データが不十分」と結論は出なかった。愛護団体側は「労働時間をより長引かせる」などの意見を表明したが、環境省は経過措置の16年5月までの延長を決めた。サンプル数を増やして調査を続ける。同省によると国内の猫カフェは225店(昨年10月末時点)。うち午後8時以降も営業する店は76店。
ちなみに「犬カフェ」は飼い主がペットを店に連れてくる形式が主流で、午後8時までの営業規制に反論が出なかった。「ウサギカフェ」など他の小動物を展示する店については営業時間の規制自体がない。
環境省の猫ストレス調査に携わった加隈(かくま)良枝・帝京科学大准教授(動物行動学)は「営業時間だけでなく、店舗の広さや清潔さ、明るさなどが猫のストレスを左右する」と指摘。「欧州では1匹あたりの床面積などの基準値を法律で定める国もある。日本もそうした規制を検討すべきだ」と話す。