防衛省:退職自衛官の建設会社再就職の自粛を解除

毎日新聞 2014年07月11日 07時00分

 防衛省は、建設業界の人手不足に対応するため、退職した自衛官らの建設会社への再就職自粛を解除する。旧防衛施設庁の発注工事を巡る官製談合事件を受けて、旧防衛庁(現防衛省)は2006年以降、自衛官を含む全ての職員に対し、事件に関係した建設会社への再就職自粛を求めてきた。しかし、重機などを運転できる自衛官を「即戦力」として活用したいとの建設業界や国土交通省の要望が強まっていることから、方針転換する。

 ただ、北陸新幹線の融雪設備工事を巡る談合事件で、官製談合防止法違反に問われた独立行政法人幹部に対し、東京地裁は9日、有罪判決を言い渡したばかり。政府や関係団体の関与した官製談合が根絶したとは言えず、時期尚早との批判も出てきそうだ。

 建設業界では、東日本大震災からの復興事業や、アベノミクスに伴う公共事業拡大の影響で、重機を運転できる作業員や鉄筋工など技能労働者の不足が深刻になっている。政府は建設業での外国人技能実習生の受け入れ期間を2年延ばして5年間にすることを決めたが、技能を持った人材をどこまで確保できるかは不透明。日本国内での人材育成が難しくなるとの指摘もあり、人手確保の決定打にはなりそうもない。「20年の東京五輪に向けて、関連施設の工事が増えていくと人手不足がさらに深刻化する」(大手ゼネコン幹部)との懸念も根強い。

 任期制を含む自衛官の退職者数は、12年度で約8000人。現役時に大型車両の運転免許などを取得している人材も多く、建設業界の新たな担い手として注目されていた。

 一方、退職者が最も多い陸上自衛官でも、退職者の約4割が警備などのサービス業に再就職するのに対し、建設業は約1割。再就職の自粛対象となっている建設会社が、鹿島建設や大成建設などの大手を含む約60社に及んでいることが影響しているという。

 防衛省は、一般競争入札の拡大など再発防止策が効果を発揮していると判断。週明けにも自粛措置を定めた通達を見直し、一部の幹部職員を除いて、自衛官の建設会社への再就職を解禁する。【工藤昭久】

 ◇背景に建設業界の人手不足深刻化

最新写真特集