消費者どうしのコミュニティで地域経済を活性化:「銭湯経済」がいま求められている理由

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大きな経済成長が見込めない現代、どういう消費活動がふさわしいのでしょうか?

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J-WAVE『JAM THE WORLD』の2014年7月2日放送分よりピックアップ。

今回は「消費」をやめる 銭湯経済のすすめ 』の著者、立教大学 特任教授の平川克美さんがゲストとして登場し、これからの時代に必要な「消費」とはどんなものなのか?、ということについてお話されています。

戦後からこれまでの金銭の価値観の変わり方、消費活動に見る人間の心理など、耳の痛い方もいるでしょうが、ここらで一度いままでの消費活動を見直すいいきっかけとなりそうです。

前半の放送内容はこちら ▷ 前時代的な不要な消費、もうやめませんか?:『「消費」をやめる 銭湯経済のすすめ 』、著者・平川克美が語る | ラジおこし

 

しゃべるひと

  • 平川克美さん(立教大学 特任教授)
  • 堤未果さん(ジャーナリスト)

  

成長もしないが衰退もしない、「定常経済」 

:前半に平川さんがおっしゃっていた「定常経済」、これ初めてこのキーワード聞く方が多いと思うんですが、ちょっと説明していただけますか?

平川:これは昔からある言葉なんですよ。

ミルが「stationary state」と言ったのを日本語に訳せば「定常経済」っていうことなんですが、要するに、成長しない経済ですよね。でも衰退もしないと。

定常経済の基本は、例えば農業。農業はある一定の土地の贈与を受けてるわけですけど、一定の収穫しかできませんよね。無限に収穫が広がっていくってありえないじゃないですか。つまり繰り返すということなんですよね。

:循環すると?

平川:循環するということです。漁業もそうですよね。獲りすぎない、乱獲しない。つまり必要なものを必要なだけ獲ると。

こういう経済が色んなところに実は日本の中にまだ残っているんだけど、知らない人が多いんですよ、意外とね。例えば、ぼくは3か月ぐらい前に商店街の一角に喫茶店つくったんですよ。

:喫茶店?

平川:自分たちの溜まり場として作ったんですよ。

例えば元気な商店街っていうのは歩いてみると、団子屋さんが2つも3つもあるんですよ。普通だったら垂直統合が起こっていく、つまり市場の論理に従えば、より安いとかより美味いところに客が集中してほかのところが潰れていくと。

ところがこれ、助け合ってるんですよね。ですから、どっかだけが突出して、商店街のある店が突出してビルなったってあまり聞かないですよね?

:そうですね。

平川:その20年経っても30年経っても同じ規模でやってる。実際、喫茶店やってみたら、すごい助け合いなんですよ、お互いに。大事にするわけです。

それで、商店街って共栄会ってのが多いんですよ。うちの商店街も共栄会っていうんです。「共に栄える」。ですから共生の道を探っていって、あの場を大事にしているわけですね。

:とりすぎない、儲けすぎない?

平川:そうですね。例えば八百屋だ魚屋だって地産地消じゃなくて、そこでその日の分を買ってその日に消費すると。

ですから、例えばアメリカであれば大きなスーパーに行ってドカンと買って家に大型冷蔵庫があってその中に放り込んで冷凍させてってやるじゃないですか。つまり必要もないものも買ってしまうわけなんですね。

でも、その日のだけの食べるものであれば廃棄は少なくて済むわけですから。ただ、それを可能にするためには毎日同じようなお客さんが同じような時間帯にリピート客として、増える必要はないわけですよ、どんどん増えていっちゃ困るわけ。同じお客さんが来てくれると。これ、まさに定常経済なんですよ。

:なるほど。成長していかないけれども衰退もしない、循環すると。

平川:リピート、繰り返すと。

  

 

経済成長の伸びしろのない社会にふさわしいのは?

平川この成長っていうのは基本的に子どもの戦略なんですよ。そりゃ、そうですよね。大人は成長しませんからね。それで、経済成長戦略っていうのは発展途上戦略なんですよ。

でも、もう発展途上じゃないんですから、日本は。大人の国に展開しないといけないんだけど、なかなかそれは、例えば経済界からもですよ、そういうこと言えないですよね。

:そうですね、企業の側は。

平川:株式会社の側からは「もう成長はやめよう」と言えないわけです。

資本と経営を分離して、資本の側は必ず明日投資したお金が増えるということを前提にしか成立しないシステムなわけです。「ゼロ金利だよ」なんて言ったら誰も投資しないんです。

ところが、この間ヨーロッパでも既にマイナス金利出しましたけど、金利は限りなくゼロに近づいているわけで、もう成長の伸びしろってないわけだから、それにふさわしい経済ってのをほんと模索しないといけない。でもそれ誰かやるんだと。

:そのときですね、企業の側がそこで降りれないとしたら、消費者の側にできることというのはあるんでしょうか?

平川:ありますね。

ですから、それがまさに企業の側はこれまでどういう形で競争戦略を作ってきたかっていうと、例えば大手のスーパーがやっていた「バイイングパワー」っていう大量仕入れをする、と。そのことによって競合に対してコストで差を付けるというようなことをやったわけですね。

これを個人の側にも恐らく使えるだろうと。個人の側はもちろん大量仕入れはできませんよ。でも、物を買うという一番ビジネスのアクティブな部分で力を持っているのは、消費者なんですよね。極端なこと言って、消費者がみんな買わなければどんなに企業がモノを作ったって、それ全部在庫品になってしまう。

:そうですね。

平川:そのバイイングパワーをやっぱり消費者は発揮する。これは、いわゆる病的な成長主義っていったものに対する、個人の側の反抗ですよね。抵抗っていったほうがいいのかな。

:その抵抗の基準はなんなんでしょうか?

平川:これ「銭湯経済」って言ってるんだけれど、例えば私が今、実は会社も秋葉原からローカル線のところに移しちゃったわけなんですけど、そこには銭湯があるわけですよ。商店街があって銭湯があってそこに入ると。昼間僕は社員に「銭湯行け」って言ってるんですよ、30分で帰ってこれるから。(笑)

:いいですね(笑)

平川:いいんですよ。爺さん婆さんとかいないから、昼間の銭湯って。

あそこ浸かってると、競争戦略とかもう誰も考えないじゃないですか、ぼけ〜っとしてると(笑)

なんか競争的にならない、融和的になるわるわけですよ。たぶんこれからの銭湯ってじゃなんなのかっていうと、あれ生活の場を共有しているところなんですよ、みんなで。銭湯ぐらいしかないんですよ、今。生活の場の共有地、コモンズですね。

:そうですね。

 

 

顔の見える消費者同士で、地域経済を活性させる

平川だからある意味で銭湯は究極のゲマインシャフトなんですよ。

で、銭湯に行くとルールがあって、例えば水をぬるめすぎないだとか、使った風呂桶はちゃんと洗って元のところに返すだとか、ありますよね。これひとつひとつ展開してみると、みんなでそこを大事に長持ちさせて使っていこうっていうことなんですよ。みんなのものだから。

少しずつ、そういうふうな形でそういうコミュニティの中では、ひとりひとりが慎ましくなるんですよね。欲望の中に生きてないんですよ。常に他者と一緒にこれを大事に使おうということで、ある種の「節度」っていったものが必然と生まれてくるんですよね。

:そうすると消費行動はどう変わっていくんでしょうか?

平川:消費もですね、結局不必要なものを買う必要がない、必要なものだけ買えばいいわけですから、当然全体のパイが落ちますよね。

だけど、定常経済であれば必ずそれは毎日繰り返されるわけですから、そこの中での経済はまわっていくと。つまり、小さな地域経済を、きちっとまわしていくということが大事なんですね。

実は私がいまいるところは全部で10以上の筋の商店街があるんですが、ものすごく元気な商店街と、すぐ横が7割がたシャッターが降りちゃってる商店街ある。

この違いを調べたことがあるんですが、やっぱり駄目になっちゃう商店街って色んな原因があるんですが、結局は右肩上がりって言うかバブルに乗っちゃったところなんですよ。

そこでマンションができていって土地の売買だなんだってバブルの中にさらされて、だいた15年ぐらい前に駄目になっているんですが、最初の頃、大店法の改正で大型スーパーが入ってきてそれに食われて駄目になるんだと思ったてたんだけど、そうじゃないんですよね。

マンションが商店街の中にたくさん、つまり事業継承ができなくなる、あるいはお金の問題で土地を切り売りする。特に銭湯なんていうのは、結構広い土地で、あれ儲かんないですから。儲かりようがないですよ、450円で。

:そうすると効率が悪いとして…?

平川:だから維持するしかないんですよ。

定常経済以外でなりたっていかないんですよ。喫茶店もそうです。全く儲かんない。お金儲けしようと思ったら喫茶店なんてやるべきじゃないですよ。

:銭湯や喫茶店が維持されていくことのできる地域社会というのが…

平川:そうですね。銭湯って、個人のものじゃなくて地域のみんなで使うものなんです。喫茶店もそうなんです。

でもそういうふうに運営していくと、八百屋もそうだし魚屋もそうだし、これある意味みんなのものなんですよね。みんなの場でありそれがコミュニティであり、それを大事にしていくという意識が商店街の中に生きているっていうか、元気な商店街は必ずそうです。

:そうすると、物の安さとかそれからお金を代償行為としての消費ということではなくて、ひとつの共同の宝物としてみていくと?

平川:そうですね。みんなの場であるわけですから。しかもその中では顔の見える消費者なんですよね。

:顔の見える消費者?

平川:みんな知っているわけです。

例えば、私が今やっている喫茶店におじいちゃんたちが来てくれるんだけど、毎日来てれるわけですよ。来ないと心配するわけですよ。「どうしたのかな、なんか倒れちゃったのかな」ってね。そういう場であるはずなんですよね。

商品交換の場ってただ商品とお金が交換されてるんじゃなくて、人間同士がそういった様々な情報を交換している、要するに生きている生活の場だということですよね。

 

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