企業活動や国民生活にとって、世界の動きが国内の動き以上に重きをなす場面が目立ってきた。貿易、金融や直接投資の取引でのグローバル化の進展に加え、人口動態を主因とする国内市場の縮小から多くの企業が活路を外国に求めていることから、この傾向は一段と強まるだろう。本書は世界の動向を分析し、問題点を浮き彫りにするとともに、世界経済における日本の「立ち位置」を明らかにし、進むべき方向とその到達へのプロセスにおける課題を探る。
分析の対象はまず、第2次大戦後から1960年代にかけての資本主義の黄金時代。以降、南の世界の主権確立、米国発の金融経済・マネー経済化とバブルの発生・崩壊を経て、新興国の台頭、米国の債務国化に至る歴史的経路をたどる。
次いで、著者の眼は、世界が、現在、抱えている問題に向けられる。人口は90年の53億人から2025年の80億人超へと増え続ける途上にある。地球規模での食料やエネルギー・資源問題の発生、先進国での人口減少・高齢化と貧しい国々におけるスラム人口の激増、人間生活に不可欠な水産資源、森林、水も「持続的な利用が多くの人にとって困難になってきている」ことを指摘する。自然環境や生態系の破壊、途上国の貧困問題、先進国での所得・富の不平等度の高まり、世界的な軍事支出の増大といった問題も強調する。
日本の課題として「循環型経済社会」構築へのかじ取りの変更を提起する。具体的には(1)「効率と競争」優先の価値観を変え、「豊かさの内実を経済成長から暮らしやすい社会へと転換」する(2)「社会は、営利原理や権力志向ばかりでなく、人とのつながりや協力によって形成され得る」との考えから、政府や企業の失敗を是正する主体としての「市民社会」を育成する(3)食糧自給の向上や農業発展のため、地方自治や環境保全を推進する――を挙げる。経済発展の段階が「モノ」よりも「ココロ」に重きを置く状況に至ったことを踏まえれば、十分検討に値する提言と評価できよう。
本書の旧版は、88年に「世界経済入門」として出版され、その後、版を重ねてきたが、今回、書き下ろしの「新・世界経済入門」として新たに出版した。記述は平易で読みやすく、めまぐるしく「場」を変える世界の動きを包括的にとらえるガイドブックとして、また、ビジネスや生活の新しい展開を示唆する啓蒙書として、広く活用され得る良書となっている。
(学習院大学名誉教授 奥村 洋彦)
[日本経済新聞朝刊2014年7月6日付]
西川潤
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