うん、まあ、浅い認識ですね。。。
最近、この手のツッコミばかり書いている気がするけど、まあ、他のネタ書こうとして面倒になったので、こちらについて言及。
世の中、WEBサービス以外にも沢山のシステムがあることを理解したほうが良い
SIerの作るシステムが、常にエンドユーザーに対して「お金を払ってでも使いたい」というような高い価値を提供できるのだとしたら、自社サービスとして開発を行った方儲かる、という事になります。
この記載からすると、この方の頭には「BtoC」型のWEBサービスしか頭にないことがわかります。人月商売言っているSIerの仕事は、「BtoC」型だけとでも思ってるんでしょうか。。。
例えば、ATM。これ、SIerが作ってますし、エンドユーザはお金を払ってでも使いたいシステムですけど、自社サービスとして開発を行うべきなんでしょうか。
銀行業に参入する?銀行免許取得して、自己資本用意して。。。。
顧客対応用のコールセンターなども必要ですね。
オンライントレードシステム。これはWEBサービスですね。
これもSIerが作ってたりするわけですし、エンドユーザがお金を払ってでも使いたいシステムですけど、同じく自社サービスとして開発するべきなんでしょうか。。。
証券免許取得しなきゃ。。。取引所との接続なども行わなければなりませんし。。。
正直いって、いずれも現実的な話ではないですね。
当たり前ですけど、SIerの提供するサービスって、非IT業向けのシステムを提供することが多いです。
これらユーザ企業にとって、システムを利用して高いエンドユーザ価値を提供することができます。でも、システム開発能力が無いことがよくあります。
SIerはその逆。システム提供能力があっても、銀行業に参入できるわけでなし、小売業に参加できるわけでないし。ユーザ企業のBPOを行える体力もノウハウも無いベンダーも多い。
この相互の能力マッチがあるからこそ、ユーザは高いカネを支払ってでもSIerに仕事を依頼したい。
別に、ユーザはシステムの規模が大規模だからSIerへ仕事を依頼するわけではありません。規模はただの一要因。大小関わらず、比較優位の原則に従いSIerに仕事を依頼することが合理的であれば、ユーザ企業は仕事を依頼するだけです。
「有価値であれば自社サービス化する」なんて言うのは、そもそもSIerが何を価値としているビジネスか、理解できてないですね。。。
そもそも、SIer = 人月商売 = 受託ソフトウェア開発としか認識してない
文章全体を通じてですが、SIerの仕事に対する認識が非常に狭いですね。。。
文体から見ると、ソフトウェア開発の受託開発の売り切りをイメージしているようですが、実際のところSIerの仕事はそれだけではないです。
オッサンは、受託開発もやったことありますが、上記の様な受託でもソフトウェア開発を行わないインフラ構築や、ASP開発など、様々な仕事を行ってきました。
受託でもソフトウェア開発は、SIerの仕事の王道でもありますがそれ以外の仕事もわんさかあります。SIerと主語を大きくする前に、まずは「受託ソフトウェア開発」に限定した議論ができるようになるとよいでしょう。
※ちなみに、ASPって形態だけ見ればWEBサービスと変わりない部分も多いんですけどね。
「原価見積もり」と「売価見積もり」をごっちゃにしている
もちろん時給の契約ではなくて「事前に定められた成果物を納品してその対価を得る」という請負契約となっていると思いますが、ベースとして人月で見積もっている時点で、時間単価で計算しており、そこから生み出される価値は無視される仕組みです。
この手の勘違い意見ってよくあります。
実際にユーザと売価交渉を行ったことが無いと、勘違いする話です。
上記の記事でも書いたのですが、人月商売と呼ばれている人月見積もりは、基本として「システム構築原価」による見積となります。
これをそのまま売価として使ってしまえば、「そこから生み出される価値は無視される」となるわけですが、実際の売価はそんなに単純には決まりません。
例えば、1MMで作れるソフトウェアがあった時、ユーザがこのソフトを500万円で買いたいと思っていたら?
請負として、500万円で成果物納品すればよいだけです。
別に、給料が30万円だからって、100万円で請け負わなくてもいいわけですよ。
※まあ、この例はちょっとぼりすぎですが。。。
まさにこの、ユーザが必要とする価値と、ソフトウェア原価のと差異が、生み出したソフトウェアの価値です。
原価を出すための人月計算と、利益を出すための売価計算をごっちゃにしてしまっては、システムを納品する価値を見ることはできません。
ポイントは、ユーザがソフトウェアにもとめている価値を見極めることができるか。
つまり、「営業力」であり、「ユーザマーケティング」の話なんですよね。
エンジニアが作成したシステムの価値を、活かすも殺すも営業力次第。「ダメな営業がシステムやエンジニアを投げ売りしている」って話と、「人月を見積もりに使うとエンジニアの価値を毀損する」って話は全く別物です。
まあ、結局のところ「高くシステムを売れる嗅覚」と「システムをトコトン効率的に作れる開発力」の両方が必要なんですね。
これががっちり組み合わされば、エンジニアを高く売ることが可能なわけです。
まとめ
まあ、長々とSIerの認識間違いへの指摘、色々書いてしまいました。
ちょっと比較対象を変えてみましょう。
モデル化して話をすると、100円の価値のアプリが1,000人が使えば10万円の価値ですが、100万人が使えば1億円の価値という事になります。
WEBサービスの優秀なエンジニアが作ったソフトウェアでも、1本100円なんですよね。。。
人月商売のエンジニアが作成した1本フルオーダーのソフト、100万円で売れることもザラだったりするわけですが、ユーザの購入価格って考えで言えば、ソフトウェアの単価だけで見れば、人月商売のエンジニアのほうが1万倍評価されているってことでいいんですかね。。。
まあ、当然違うわけですが。
数がはけるかはけないか、ソフトウェア単価が高いか安いかはビジネスの違いなだけです。それをもってエンジニアの価値を毀損云々言うのは筋違いってもんでしょう。
フルオーダーの50万円のスーツを作る仕立屋より、980円の量販店の服を作る既製服屋の中の人の方が優秀って言っているようなもんです。
生半可な知識で人月商売批判したって、貶めるのはpaizaの評判だけな気がします。
以上