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岸博幸のクリエイティブ国富論
【第269回】 2014年7月11日
著者・コラム紹介バックナンバー
岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

“日本惨敗”はW杯だけではない
経済でもドイツ、オランダに絶対勝てない理由

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日本代表の予選落ちは順当な結果

 サッカーのワールドカップも残すは決勝戦だけとなりました。今回のワールドカップで印象的だったのは、根拠なき日本代表の下馬評の高さです。ワールドカップが始まる前は、多くの評論家が、日本は予選突破できるしベスト8に残るのも可能と言っていましたが、結果は正反対。2敗1分けで予選リーグも突破できませんでした。

 しかし、ある意味でこの結果は順当なものとも考えられます。予選C組の4チームのFIFAランキングを見ると、

 コロンビア     8位
 ギリシャ      12位
 コートジボワール  23位
 日本        46位

 ですので、この順位からは日本は3戦全敗でもおかしくなかったからです。逆に言えば、ベスト8が可能といった主張には明確な根拠もなく、そうした意見が世間に蔓延したこと自体がおかしかったとも言えます。

経済はサッカー以上にぼろ負け?
ダントツに低い日本人の生産性

 そして、話はサッカーだけに留まりません。気がつくと、サッカーの日本代表のみならず、日本経済についても同じように根拠が薄弱な楽観論、強気論が多すぎるように思えます。アベノミクスで日本の産業や企業は競争力を取り戻したという、日経を中心に展開されているお気楽な日本経済復活論です。

 確かに、株価こそ膠着状態から抜け出せないものの、経済成長率、失業率、有効求人倍率など、マクロ経済の最新の指標は良い数字ばかりですので、日本経済は復活しつつあり、企業も競争力を取り戻したかのように見えます。しかし、冷静に考えると、日本経済もサッカー日本代表と同じ状態であることが分かります。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。

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