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β版から1万7000以上のバグを修正した「RHEL7」、満を持して提供に
(2014/7/11 06:00)
レッドハット株式会社は7月10日、同社のLinuxディストリビューションのメジャーアップデート「Red Hat Enterprise Linux (RHEL) 7」を発表した。米国で6月12日にリリースされた製品の国内での発表となる。
同日開催された記者説明会で、レッドハット株式会社 代表取締役社長の廣川裕司氏は、RHELがエンタープライズOSとしてのプラットフォームを、物理サーバーから仮想マシンへ、そしてクラウドへと広げてきてきた歴史を紹介。そのうえでRHEL7を「エンタープライズOSの再定義」と位置づけた。
廣川氏は主軸となるターゲットとして、エンタープライズ分野でのメインフレームやUNIXなどからの移行を挙げた。また、「まだWindowsサーバーのシェアが大きく、特に日本ではシェアが大きい。その中で最も多く使われているWindows Server 2003が2015年にサポート終了となるのを機に、別のチョイスとして企業に検討してもらえるようにしたい」と語った。
RHEL7はRHELの3年半ぶりのメジャーリリースとなる。2013年12月にβ版がリリースされて以来、1万以上のダウンロードがあり、約7000人がベータテスト、厳選した60のエンタープライズユーザーの検証を経て、1万7000以上のバグを修正したという。サーバーOSでは、不具合修正などがある程度枯れたマイナーバージョンアップ以後に採用する企業が多いが、「RHEL7のベータテストに参加した368社のうち、62%が正式リリースから6カ月以内の利用を予定している」という調査結果も紹介された。
RHEL7の新機能については、Red Hat本社のプリンシパルプロダクトマネージャーの鶴野龍一郎氏が紹介した。
最初に解説されたのが、コンテナ技術のサポートだ。コンテナ技術とは、OSの上で別のOS環境(コンテナ)を動かす技術。ハイパーバイザーによる仮想化とは異なり、LinuxカーネルはホストOSのものを使い、その上でライブラリやアプリケーションなどのユーザーランドを、ホストOSやほかのコンテナと分離して実行する。そのため、ハイパーバイザーによる仮想化と比べて、サイズなどのリソースの小ささや、迅速な実行などが特徴だ。
RHEL7では、Linuxのコンテナ技術を使ってコンテイメージの管理や迅速なデプロイ(配備)を実現するシステム「Docker」を正式にサポートした。また、RHEL7をベースに、Dockerのホストに特化した「Atomic Host」も開発中。
鶴野氏はDockerのメリットとして、コンテナを1つのイメージとしてほかのサーバーにデプロイできる「柔軟性」や、開発チームがイメージを構築したらそれを運用チームに渡すだけで利用でいる「運用の効率化」、アップデートも新しいイメージに入れかえるだけで検証の工数が減らせる「保守の簡易化」などを挙げた。そして、「運用チームはハードウェアやネットワーク、モニタリングなどに集中できるようになる」と語った。
Atomic Hostは、このDockerのホストに特化し、不要なパッケージを省くなどコンパクトにしたものとして開発中のもの。基本はRHELであり、ハードウェアのエコシステムなどはRHELと同じように利用できる。Atomic Host自身のOSアップデートには、RHELと異なり、ファイルシステムの差分アップデートを配布する「rpm-ostree」を採用する。
説明会ではAtomic Hostの機能として、管理コンソール「Cockpit」のデモ動画も紹介された。CockpitはWebベースのサーバー管理コンソールで、特にDockerの操作に対応。デモ動画では、Cockpitからコンテナを実行するところや、CPUやメモリの使用量のモニタリングや割り当て変更などが実演された。なお、Cockpitは現在RHEL7には入っておらず、Atomicで利用できるようになる予定。
鶴野氏はDockerの利用ケースについて、エンタープライズなどよりWebのサーバーやデータベースなどの用途が多くなるだろうと語った。ただし、Red HatでDocker認定プログラムを発表したため、アプリケーションベンダーがDockerイメージとして配布するようになれば一般的なワークロードで使われるだろうと述べた。
また、RHEL6では「Scalable File Systemアドオン」を購入することで利用できたXFSファイルシステムを標準でサポートし、さらにインストール時のデフォルトのファイルシステムとして採用した。RHEL7のXFSでは最大500TBまでをサポートする。従来のext4ファイルシステムも利用でき、最大容量が50TBへと増大。高機能なbrfsファイルシステムもテクノロジープレビューとして提供する。
Windows環境との相互運用性も強化された。Active DirectoryにRHELを参加させてActive Directoryに認証を統合する直接的な連携と、Active DirectoryとRHELの認証を同期する間接的な連携の両方を、認証機構のSSSDによりサポートする。これにより、ユーザー管理の多重化による工数やコストの増大を防げるという。
パフォーマンスの強化としては、データベースやWebサーバーなど、用途別に最適化したプロファイルをRed Hatが用意し、インストール時の構成選択を元に適用するようにした。また、システムのパフォーマンスを視覚的にモニタリングする「Performance Co-Pilot」や、Java VMをモニタリングする「Thermostat」、システムの状態を見て自動チューニングする「tuned」、パラメータを変更してチューニングする「Tuna」を提供。こうしたことから、RHEL6に比べて、OLTPで10%、オープンソースデータベースで13%、Javaで25%のパフォーマンス向上を実現したという。
インストールとOSのデプロイメントの面では、RHEL6の最新版から再インストールなしでRHEL7にアップグレードするインプレースアップグレードを正式にサポートした。最初にアシスタントツールを実行してレポートを作成し、アップグレード可能かどうか診断。問題がなければ、アップグレードツールを実行するという手順となる。「RHELが出たからといって入れかえるのでは費用などが大変、というユーザーからのリクエストに応えた」(鶴野氏)。
また、インストーラのanacondaのユーザーインターフェイスも一新。多数の画面を順番に表示して設定する形から、少ない画面に設定項目を一度に並べて、必要な項目を選んで設定する形になった。
管理と起動の面では、サービス起動管理デーモンのinitを、従来のsysvinitから「systemd」に変更した。systemdでは並列にサービスを起動してシステム起動時間を高速化するなどの特徴がある。また、システムのさまざまなベース機能を統合している。
ただし、systemdへの移行などの変更は、ユーザー側のシステム管理者にとっては大きな変化となり、知識のアップデートが必要になる。これについては、8月からRHEL7のシステム管理などの研修コースを始める予定が語られた。また、従来のinitスクリプトもsystemdで動作すると説明された。
これらをふまえ、鶴野氏はRHEL7について「いままでもっとも野心的なリリースだと認識している」とまとめた。
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