Updated: Tokyo  2014/07/11 08:10  |  New York  2014/07/10 19:10  |  London  2014/07/11 00:10
 

さわかみ投信会長:若い世代使わぬNISAに喝、減税が必要

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  7月11日(ブルームバーグ): 独立系投資信託会社のさわかみ投信の沢上篤人会長は、800兆円を超す預貯金を本格的に株式投資へ向かわせるためには、現行の少額投資非課税制度(NISA)では不十分とみている。制度の恒久化が最低限必要であり、むしろ非課税を売りにするNISA以上に、長期投資減税制度の導入が必要と話す。

沢上氏は8日に行われたブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、NISAの非課税期間が5年に限定されており、「意味がない」と指摘。「若い人はこれから30年、40年働かないといけない。長期投資の減税が大事になる」と述べた。長期投資の魅力を説くため、年間で約200回のセミナーを開く同氏からすれば、新たな長期投資家を育てるのに現行制度は力不足と映っている。

ことしから始まったNISAについて、金融庁が6月23日に公表した調査結果によると、3月末時点の総口座数は650万3951件と制度導入時の1月1日時点の475万件から約37%増えた。NISA口座における総買い付け額は1兆34億円で、上場株式が3645億円(内訳比率36.3%)、投信が6212億円(61.9%)、指数連動型上場投信(ETF)が91億円(0.9%)、不動産投信(REIT)が86億円(0.9%)など。

60歳以上が6割超の現実

一方、年代別の買い付け額では60歳代以上が65%を占め、資金的余裕にも乏しい20歳代はわずか2%、30歳代は6.5%と合計でも10%に満たない状況だ。政府は若年層や投資未経験者を意識し、預貯金から投資への流れを本格化させようとNISAを導入したが、新たな投資家層の開拓という点で「評価していない。数字に出ており、ほとんどが投資経験のある人」と沢上氏は言う。

NISAは、年間元本100万円までの株式や投信を新規購入した場合、値上がり益や配当が5年間課税されない制度。口座は2014年から23年の10年間に開設でき、同期間に非課税投資枠を最大5つ、計500万円の枠を持つことが可能だ。5年の非課税期間終了時に評価額で100万円までを翌年の非課税投資枠に繰り越し、1つの非課税投資枠を最長10年まで継続させることもできる。

成長戦略を通じて企業の稼ぐ力の強化、株式市場への投資資金の流入促進を狙う政府は、NISAの拡充を模索している。麻生太郎財務相兼金融担当相は1日の閣議後会見で、NISAの非課税枠を現行の年100万円から240万円への拡大を検討する考えを示唆。一部報道で対象年齢を20歳以上から引き下げる可能性が伝えられた点については、今考えているわけではなく、民法関係全部に関係する話とした上で、「18歳でもおかしくないと私自身は思う」と麻生氏は発言した。

非課税は短・中期売買の温床

ただ沢上氏は、非課税枠の拡大や対象年齢の引き下げが若年層のNISA利用につながる可能性については否定的だ。「非課税措置というのが前面に出過ぎた。非課税は短期、中期売買を促進するだけ。証券売買に慣れている人たちは、枠が拡大されればもっと使う」とし、投資未経験者を株式市場へ誘導する政策としては方向が違うとみる。

日本銀行の資金循環統計によれば、3月末時点の家計の金融資産残高は1630兆円。そのうち現金・預金は53%に当たる865兆円で、9.1%は株式・出資金は9.1%の148兆円、投信は4.8%の78兆円となっている。865兆円を「世界最大の眠れる資源」と評する沢上氏は、それを投資の世界に動かすために、7年以上保有した株式の売買を無期限で非課税にする長期投資減税策のアイデアを持っている。

さわかみ投信は、追加型の日本株投信「さわかみファンド」を運用しており、6月末時点での純資産総額は2948億円。国内籍の日本株アクティブファンドでは、フィデリティ日本成長株ファンド(3513億円)に次いで2番目に大きい。同ファンドの基準価格は6月末までの3年間で44%上昇、同時期のTOPIX のトータルリターンは59%。

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 竹生悠子 ytakeo2@bloomberg.net;東京 野原良明 ynohara1@bloomberg.net;東京 Tom Redmond tredmond3@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Sarah McDonald smcdonald23@bloomberg.net院去信太郎

更新日時: 2014/07/11 00:00 JST

 
 
 
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