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17時台の特集/バックナンバー
目次 › 2014年7月3日放送の17時台の特集/バックナンバー
リアル 〜減少する大阪市の生活保護世帯〜
去年の12月から生活保護を受給しているMさん(仮名)。突然、不安に襲われるパニック障害を患っています。
 
「病院は2週間に1回通っています。前までは夜も寝られなかったんですが今はだいぶん寝られるようになりました」
(大阪市在住 Mさん(30代男性))
 
 
病気の症状で、時々手に震えが出ています
 
建築関係の仕事をしていたMさん。3年前、職場で突然、過呼吸で倒れ、そのことが原因で職を失いました。
その後、体調は悪化して貯金もなくなりました。
  
両親とは疎遠で頼れる人はなく、去年の秋、浪速区役所に生活保護を申請しました。
  
「もうお金もなくて食費すらない状態だったのに、そのことも区役所の人に告げたんですが
全然とりあってくもらえなくて、とにかく仕事を探しなさいという状態で、それで帰されて,,,」
  
貧困が深刻化している大阪市では生活保護率が高く、全国平均の3倍以上。
特に浪速区と西成区は突出しています。
 
   
しかし全国で生活保護世帯が増えている中で大阪市はここ数年、連続して受給世帯を減らしています。
 
   
平松市政から始まった生活保護費削減の動きを、橋下市長がさらに強化し、
不正受給の対策にも力を入れたことでピーク時と比べるとおよそ1000世帯の受給を減らしているのです。
  
これを評価する人々がいる一方で、本来のセーフティーネットの機能を脅かしていると問題視する人々もいます。
そんな学者や弁護士らが中心となり調査団を結成しました。
  
「“助言”に名を借りた違法な“指導指示”が行われている。
そこに行き過ぎはないのかというところが全部ブラックボックスになっている」
(普門大輔 弁護士)
 
   
電話相談では1日で130件以上の相談が寄せられました。
  
「生活保護を『(家賃)4万2000円以下の家でないと受けられない』、
というようなことを言われたというのは、これはめちゃくちゃな話なんですが…」
  
「6万円の家賃でも8万円の家賃でも生活保護を受け付ける事はできますし、生活保護を受ける事も出来る。
今の話では6万円と聞いた瞬間に『それでは生活保護を受けられない』と追い返してしまった。
これは明らかな違法対応と言えると思います」
(普門大輔 弁護士)
 
生活の困窮と病状を訴えたMさんに対して浪速区役所は「助言指導書」を手渡しました。
これは大阪市が働ける世代に対して、「職に就くこと」を指導する独自に定めたガイドラインで、
調査団は、この「指導」が行き過ぎていると問題視しています。
  
Mさんは「助言指導書」に基づいて「継続的かつ自立を目指した仕事に就くこと」を、
期限をきめられて「指導」されました。
  
所持金はほとんどなく、1日1食、買い置きしていた米を食べながら職を探しましたが見つかりませんでした。
その旨を担当に伝えたものの、1ヵ月近く引き延ばされた上で申請は却下されました。
  
「お金なくてお腹も減ってどうしようもなくって支援団体か何かないかなと思って」
 
Mさんはネットで偶然見つけた参議院議員の掲示板にメッセージを残しました。
  
それを見つけた秘書の伊木知史(いき・さとし)さんがMさんに連絡をしました
  
「駅で待ち合わせをしたんですが本当にもう痩せていはったし、もっと年取ってみえたという状態、
もう歩くのも大丈夫かなと」
(共産党 辰巳幸太郎議員の秘書 伊木知史さん)
  
Mさんは伊木さんや弁護士の助けを借りて、もう一度保護の申請をしました。
すると今度は申請が認められたのです。
 
   
Mさんの状況は何一つ変っていないのですが、二度目はなぜか申請から17日で受給が認められました。
  
「伊木さんに出会わなかったらたぶん野宿生活になっていたし、
本当に困っている人をもうちょっと見極めてほしいというか…」
  
あいまいな生活保護行政のあり方について、調査団と区役所が協議する場が設けられました。
Mさんも、なぜ一度目の申請が認められなかったのかを知りたくて、参加しました。
 
   
「問題の解決策がどこにあるのか一緒に考えさせていただきたい」
  
Mさんは自分が感じた疑問点を責任者にぶつけました。
 
「同じペースで同じように就職活動していたのに、なぜ二度目の時は許可が下りたのか?」(Mさん)
 
「就労にかかる助言指導のガイドラインこれを大阪市が作って我々はそれに沿ってやっておりんですが…」
(浪速区 生活支援担当 原口利充課長)
 

「まあ要は努力が足りないと判断した根拠ですね。どこまでやればいいんですか」
 
「細かい事をここで申し上げるには差し控えたい」(原口課長)
 
「一回目と二回目とどこが違ったのですか?」(小久保弁護士)
 
「それもお答えしかねる」(原口課長)
 
「全部それで、あと1時間これでいくんですか?」(小久保弁護士)
 
議論は平行線に終わりました。
 
「何ひとつ僕の質問に答えてもらっていないので、何をしにきたのか全然分からない…」
 
関西テレビも詳しい説明を聞きたいと、原口課長を通じて浪速区長に取材を申し入れましたが
「生活保護にあまり詳しくない」という理由で、拒否されました。
  
「今の国のルールからすればルール違反がありました。
『ハローワークで求職活動をしていついつまでに就職すること』というのは、今のルールでは認められない。
これはもう指示、指示指導にあたるので、国のルールに違反したところはこれは改めます。
ルール違反は改めますが、僕はルール自体を変えていきたいと思いますね。
『憲法違反だ』ということを国は言う訳ですが、そうであれば憲法25条の改正も必要ですよ」
(橋下徹 大阪市長)
 
   
市長は、窓口で法令違反があったことを認めましたが、そもそも生活保護のルール自体がおかしいと述べました。
  
「是非職員の対応を見てもらって、この言葉がルール違反なんて、
そんなことないだろうと一般の感覚では思うはず」
(橋下市長)
  
 
しかし、市民が職員の対応をチェックしたくても、浪速区役所ではそれができなくされています。
  
「あれが監視カメラですね。一方(区役所側)は違法行為がされないように撮影録音ができる、
しかし相談者の側については録音はできないと…」(小久保弁護士)
 
   
どんなやり取りが実際にあったのかは、行政側だけが記録できるという状況です。
  
生活保護受給者と直接関わるケースワーカーを7年間努めていた中山さんは、
 行政がルール違反を犯す背景について、「ムダを徹底的に排除する」今の大阪市の方針が
現場に及んでいるからだと語ります。
  
「無駄を省くというところに生活保護の行政が位置づけられてしまうと、生活保護の件数を減らす事を
競い合うということに、結果としてなりますから、職員に対しても成果を求める成果主義、
(保護費を)削減することありきという流れに、どんどん強まっていくということになるでしょうね」
(元大阪市ケースワーカー 中山直和さん)
 
  
「保護費削減が目的ではないのでね。ただ、あまりにも大阪市の生活保護費が莫大過ぎる。
これなんとかしなければいけないというのは、これ考えるの当たり前ですよ。
無尽蔵にお金が湧き出るものではないんでね」
(橋下市長)
  
生活保護開始から半年、Mさんの病気はまだ完治していませんが、
自立するためにアルバイトを始めました
  
「あの役所の対応が嫌になって、正直もう区役所に行くのがいやで
(病気の)不安はあるがどうしても早く保護を切りたいとそれで悩んでいる」
 (Mさん)
 
2014年7月3日放送
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