釜山の家畜市場でケージに入れられた犬(2014年3月) ZUMA24.com

 韓国に犬肉をめぐる問題がないのであれば、なぜ関係行政機関のトップが犬肉を食べるのを止めたのだろうか。

 食品医薬安全処(MFDS)の責任者、Chung Seung氏は8日の議会公聴会で、1年前に現職に就任した後、犬肉を食べるのを止めたと発言した。理由は明らかにしなかったが、MFDSの当局者は食品衛生が問題となり違法な犬の食肉処理が横行するなかで、MFDSの責任者が犬肉を食べ続けるのは適切ではないと述べた。

 動物保護団体はかねてから韓国の不衛生でぎゅうぎゅう詰めの犬の養殖場や動物輸送、残酷な屠殺(とさつ)慣行などに抗議してきた。

 韓国では犬の養殖や消費はグレーゾーンで、規制がほとんど行き届いていない。これはある意味、韓国が引き続き先進国と途上国との境界をまたいでいる現状を表している。

 ソウルでは犬肉が正式に禁止されている。韓国の法律で犬は家畜として分類されていないことから、全国的には規制の及ばない飲食店や犬養殖場が数多くある。

 状況の改善を図るため犬肉産業を合法化させようという動きもあるが、政治家や動物愛護団体からの反対で進んでいない。愛護団体は産業の規制ではなく、禁止を優先している。

 韓国の動物保護団体の1つKAWAの幹部は「そもそも、犬肉産業は残酷で非情だ。産業を合法化すれば(犬)肉の衛生改善につながるだろうとの議論もあるが、過去に照らしてみても食用に犬を適切に飼育することは不可能なことが分かっている」との見方を示した。

 MFDSの当局者は非衛生的な犬肉レストランを取り締まっていると述べたが、ソウルの飲食店で犬肉を売れば法律で罰せられるのかとの質問には「難しい問題」なのでコメントできないと述べた。

 2018年に開かれる平昌冬季五輪の組織委員長は今年に入り、韓国人が犬肉を食べることを否定し、議論を回避しようとした。

 韓国では蒸し暑い夏を乗り切るために「犬肉スープ」などスタミナ料理を食べる習慣がある。KAWAをはじめとする動物保護団体は一緒に11日にソウル市長を訪問し、犬肉産業への反対を表明する計画だ。

関連記事