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虫のいい話

まず、一番最初に言っておきますが、今日書く話は論理的には因果関係が薄弱な内容です。ただ、かなりの信念を持っている内容でもあります。

 最近の人口減を受けて、日本の中で「自然増(出産増)」と「社会増(外国人)」の議論がされています。今日は「社会増」について書いてみたいと思います。

 日本の国内でよく聞かれる議論に「『有能な』外国人『だけ』どんどん来てほしい。」というものがあります。私には「なんと、虫のいい話を。」と思えてなりません。なお、私は「有能な外国人」という表現が好きではありませんが、物事を簡略化する観点から使わせていただきます。

 まず、日本人、特に学生が外国に出て行かないのに、「有能な外国人」が日本に入ってくることは無理だと思うのです。ましてや、「入超で」入ってくることなど絶対に無理です。

 ここからは根拠薄弱なのですけど、こういうのはある程度「出」と「入」とで均衡とまでは行かなくても、ある程度釣り合いが取れている必要があります。そして、今、諸外国における日本人留学生の数は激減しており、アメリカの大学では中韓の学生が日本人を席巻しています。

 金銭的な問題があるのは分かりますが、それ以上に、国内に蔓延する「内向き感」も大きく影響しているように思います。「日本の中がそれなりに心地いい」のだと思います。その結果として、「何も無理して海外でチャレンジすることまでない」と考えるのなら、日本はどんどん国際的な競争に取り残されていくでしょう。この差は、今後、確実に国としての足腰という意味でボディーブローのように効いてきます。

 こういうふうに言うと「日本人の有能な人材の海外流出」という批判があります。それは間違ってはいませんが、どんどん外国に出て行き、世界でチャレンジする学生が増えれば、最終的には日本にプラスに働くでしょう。

 例えば、高校生はもう日本の大学だけを目指すのではなく、大学からどんどん外に出て行けばいいと思うのです。卒業後はそのままその国で活躍するも良し、将来的に日本に戻ってくるも良しです。その裏返しとして、日本に入ってくる「有能な外国人」も増えてくるでしょう。(しつこいですが)因果関係は示せませんけども。

 「日本からは有能な人材は外に出て行ってもらっては困るけど、『有能な』外国人には来てほしい。」、こんな虫のいい話をしている限り、日本に「有能な外国人」がたくさん来ることはないでしょう。

 あと、もう一つ「有能な外国人『だけ』」というのは、これまた無理があります。勿論、主権の行使として誰をどういう形で入国させるかという所には、国の政策がなくてはなりません。その上で、ある程度は間口を広く開けないと「有能な外国人」も入っては来ません。また、「人口減」への対処まで考えるのであれば、「全体としての間口」が広がる中でしか、「有能な外国人」を含む外国人の数は増えていかないでしょう。

 こういう社会増の話をすると、時折激烈な反応が返ってきます。私も「社会増」など考えずに済むなら、それで良いと思います。しかし、「人口減」はまず経済全体へのデフレ要因です(もっと言うと、人口構成の高齢化は消費減の働きをします。)。経済成長を考えるのであれば、需要を維持する必要があります。そして、国の借金、社会保障負担、これらを賄うためには一定程度の人口増とそれに伴う経済成長が絶対に不可欠です。その視点なしに、「社会増」の議論を排除するのは無理な話です。

 ただ、いつもこの議論をしていて、まだ自分自身で判断しきれていないことが一つあります。それは「日本が本格的に社会増政策に乗り出した時、日本社会はその衝撃に耐えられるだろうか。」ということです。例えると、家の右隣から朝「アッラー・アクバル」というお祈りが聞こえてきて、左隣から濃厚なインドカレーの香りがしてくる環境、私は全然気にいたしませんが、私の両親の世代にはかなり厳しいかなという気がします。

 その衝撃は相当なものがありますけども、その一方で私は「日本文化の強さ」を信じています。「一世」の方が社会に完全統合されるのは難しいかもしれませんが、二世、三世になってくれば日本文化に統合されてくると信じています。その過程で、異文化との融合を通じて、また新しく高められた日本文化の姿が見えてくるかもしれません。

 「『有能な』外国人『だけ』どんどん来てほしい。」、耳当たりは良いですけども、それは虫が良すぎます。

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