ルビコン河で溺れる韓国

中韓首脳会談を木村幹教授と読む(1)

鈴置 高史

これでは「中国の使い走り」だ

鈴置:それを明快に指摘したのが、親米保守派の指導者、趙甲済(チョ・カプチェ)氏です。自身の主宰する趙甲済ドットコムに7月6日「米国が支持する日本の集団的自衛権を、韓国の大統領が中国と手をとり批判するなんて!」(韓国語)を載せました。朴槿恵大統領の発言に対する批判の骨子は以下です。

  • 韓国が北朝鮮から攻撃された際、日本が米国を助けようとすれば(すなわち、韓国を助けようとするなら)集団的自衛権の行使が必要だ。だから米国は日本の集団的自衛権の行使を積極的に支持しているのだ。
  • 大韓民国の大統領が敵(北朝鮮政権)の後ろ盾である中国の側に立ち、同盟国である米国を間接的に批判したということになる。韓日関係はもちろんのこと、韓米同盟にヒビを入れかねない発言だ。
  • 韓国の大統領が、北朝鮮の核開発を庇護して来た中国と手を携えて日本を攻撃的に批判したことは、中国の使い走りを忠実に果たしていると米国の眼に映る可能性がある。

保守も朴槿恵批判

保守メディアが、保守の朴槿恵大統領を激しく批判したものですね。

鈴置:米韓関係悪化への保守の危機感が、いかに深いか分かります。ただ趙甲済氏は保守とはいえ、権力に遠慮しない人で、これまでも率直な朴槿恵批判を書いてきました。

 しかし今回は、政権に近い保守系紙までもが朴槿恵外交にはっきりと疑問を呈しました。潮目が変わったと思います。

 中央日報の7月5日の社説「日本に高強度警告メッセージ送った韓中首脳」(日本語)のポイントは以下です。

  • 日本の集団的自衛権の容認は日米同盟の強化につながるものだ。このため、韓国が急速に中国の側に傾くのではないかと米国が疑う可能性がある。
  • 中国との対日歴史協調が政府次元で行われることが(外交的に)負担にならないか、確認する必要がある。

 以下は、東亜日報の5日の社説「我が国で日本を叩いた習近平、韓国の“均衡外交”揺らすか」(韓国語)の抜粋です。

  • 習主席は韓国を“日本叩き”に引き込むことで韓米同盟と韓米日共助に亀裂を入れるという外交的成果を収めたのだ。
  • 東北アジアで勢力拡大を図る中国と、日本を通じこれを阻止しようとする米国の間で韓国は外交的なジレンマに陥ってはならない。

著者プロフィール

鈴置 高史
鈴置 高史
日本経済新聞社編集委員
1977年、日本経済新聞社に入社。ソウル特派員(87〜92年)、香港特派員(99〜2003年と06〜08年)などを経て、04年から05年まで経済解説部長。02年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。
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