最高の仲間と最高の仕事を:日記が楽しくなるジャーナルツール「Day One」の開発秘

2014.07.10 20:00

Paul Mayne、ポール・メイン、Day One、Bloom


日記を書き続けることには、大きな心理的メリットがあります。人生を大局的にとらえることができるばかりか、クリエイティビティの強化にもつながるのです。そのためのおすすめツールのひとつが、「Day One」。自分のエントリーを記録するのはもちろん、書き続けるための工夫が随所に施されており、使うほどに楽しくなるのが特徴です。

有名アプリの誕生にまつわる逸話を紹介する「Behind the App」シリーズ、今回はDay Oneの会社「Bloom」の創設者兼デザイナーであるポール・メイン(Paul Mayne)氏に、アプリの開発秘話をうかがいました。

           


── Day Oneのアイデアは何がきっかけで生まれたのでしょうか。あなた自身が直面していた問題の解決策としてなのか、それとも別のきっかけがあったのですか?


メイン:私はかつて、日記を続けられた試しはありませんでした。でも、それがもたらすさまざまな利点を考えると、自分史を残すというコンセプトには魅力を感じていました。特に、デジタルでそれをできたらいいなと。子どものころからずっと、映画やコンサート、スポーツの試合など、いろんなチケットの半券を集めてるんです。写真もたくさん撮ります(110フィルムで)。いつか、それらの素材を使って、自分の人生を振り返れるような何かを創れたらいいなと、ずっと思っていました。


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── アイデアを思いついた後、次にした行動は何ですか?


メイン:基本コンセプトを何年も温めていましたが、自分でそれを実現できるほどの専門知識がなくて。Day Oneを発表する1年前、Mac用の基本バージョンをデザインし、プログラマーの友人に売り込んでみました。パートナーになってくれる人を求めていたのですが、反応はいまいち。あまり魅力的ではないと言うのです。それもそのはずでした。私のアイデアは、あまりにも大げさなものになっていたのです。何もかもを詰め込んだライフトラッキングアプリのような。例えば、「今日飲んだコーラの本数は?」のように、生活の中で起こったあらゆることを詳細に残しておける代物です。私は、自分の複雑なアイデアを人に話すたびに、「でも、個人的な日記を書くのにも使えるんですよ」とひとこと添えなければなりませんでした。

デザインと商品を改善し、単純化に価値を見いだせるようになるまで、さらに1年がかかりました。このアプリは、シンプルな日記ツールじゃなくちゃ。まずはそこから始めようと思えるようになったのです」。


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── ターゲットとするプラットフォームはどのように決定しましたか?


メイン:私は、Appleのデザインセンスや、対象を限定してクオリティの高いものを創る姿勢が気に入っています。Appleのエコシステム内で仕事をすることで、刺激が得られるばかりか、まったく新しい技術を利用して、ユーザーの大多数にそれを提供できるのです。例えば、iOS 8とOS X Yosemite(今秋発売)に導入される新しい「拡張機能」を利用できるのが、今から楽しみです。

MacやiOSの大きな特徴の1つが、App Storeです。便利でイノベーティブなツールがたくさんあるのに、毎日のように新しいものが追加されていきます。私のスマホのアプリ数は、尋常じゃありません。

Androidの需要もかなりあるので、折を見てAndroid版も投入したいですね。でも、小さなチームなので、今はまだひとつのプラットフォームに集中しておく方が、いいものが作れるのではないかと感じています。


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── もっとも大変だった点は? それをどのようにして乗り越えましたか?


メイン:あまりに多くのことを、あまりにも急いでやろうとしてしまったことです。成功には、タイミングが欠かせない要素だと思うのですが、バランスも必要です。最初の1年は、何もかもを急いで世に出したかったので、2回ほど痛い目に遭いました。

今では、頼りになる開発チームがいるので、アジャイルなアプローチを取ることができています。テストやリリースのための優れたプロセスも確立されているので、修正アップデートも少なくなり、App Storeでのユーザーレビューもよくなりました。


── ローンチした時はどのような感じでしたか?


メイン:極めてエキサイティングでしたね。昔からソフトウェアやウェブサービスのクリエイターに憧れていて、まさか自分で作った誇れるものを世に出せるなんて思ったこともありませんでしたから。実は、期待もそんなにしていませんでした。自分で使うためだけに、このツールの開発にお金をかけてもいいと思っていたぐらですから。でも、実際はこのアプリを便利だと思ってくれる人がいた。それが本当に嬉しくて。

ローンチの成功を見て、もしかしたらこれでお金を稼げるかもしれないと思いました。これで飯を食っていけるのではないかと。そんな夢が、現実になったのです。


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── ユーザーの要求や批判にはどのように対応していますか?


メイン:最初の1年は、ユーザーのフィードバックがとにかく役に立ちました。今でもそうです。ローンチ時は、ユーザーが日記に期待する機能の多くを実装していませんでした。でも、フィードバックのおかげで、それらを実装すべきだと感じて、アプリに追加しようと思うようになりました。それらは、もうすぐ実現する予定です。


── 現在は「新機能」と「既存機能」の開発に割く時間の比率はどれくらいですか?


メイン:Day Oneのローンチから3年が過ぎました。チームメンバーは7人に増え、バグの修正や新機能の追加など、あらゆる方向からアプリの改善に取り組んでいます。先日から、現行のアプリを全員で開発するのをやめて、現行アプリのサポートと次なる2.0アプリの開発の2つにわけるという方法に移行しました。これは段階的なプロセスであり、既存機能と新機能の間のバランスは、これから常に議論していかなければならない話題だと思っています。


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── 同じような試みをしようとしている人に、どのようなアドバイスを送りますか?


メイン:1. 最高の仲間と働くこと。私は、最高のメンバーと出会えてラッキーでした。彼らは自分の仕事を愛していて、とてもいい仕事をしてくれます。そして、とても気の合う仲間でもあります。

2. 1つの目的に集中して、できるだけ最高のユーザーエクスペリエンスを提供する。1つの機能を丹精込めて磨き上げ、それに関しては誰にも負けないものにする。余分なアニメーションやデザインのディテールにこだわらない。見た目はそれなりでも、機能をよくすること。新しいことや予期せぬことに努力すること。


Andy Orin(原文/訳:堀込泰三)

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