うつ病の再発率は、60%と高く、再発後の再発率は、さらに高いと言われております。
うつ病の再発を予防するために何をすべきか?カウンセリングの現場から見たうつ病の再発予防策について、お話し致します。
なお、身近にうつ病を完治された方がいらっしゃらない方は、肩を痛めて投げれらなくなってしまった野球の投手(大切なエース)が、継続的に安定したピッチングが出来るようになるまでをイメージしながら読んで頂ければと思います。
■うつ病再発予防策1・・・うつの症状を無くす
まずは、発症しているうつの症状を無くさなければなりません。医師の指導の元、休息や身体作り、薬物治療などにより、うつの症状から回復を図ります。
休職や休学している場合、この回復が職場や学校への復帰の大前提となりますが、症状がなかなか治まらずに完治での復帰を諦めてしまったり、立場や生活面を考え長期に休めない状況、もしくは家に安らぐ場所がないなどの環境条件から、症状が完全に治まらないまま、自分の意思で職場や学校に復帰してしまうケースも少なくありません。
この場合、医師からの処方薬が非常時レベルのものになっていないケースもあります。薬でなんとか安定を保っている状況での復帰は、症状悪化時のリスクを踏まえると避けたいところですが、復帰してしまった場合は、会社や学校に行きつつ治療を進めなければならないため、少しの変化でも報告させ病院へ行かせるなど、きめ細かなフォローが必要になります。
■うつ病再発予防策2・・・ヒューマンスキル強化のためのトレーニングをする
うつ病発症の原因に、そもそも不足あるいは仕事や学校、家庭などで置かれた立場、環境によりさらなる強化が必要なヒューマンスキルがある場合、そのトレーニングをしなければなりません。
たとえば、何でもネガティブに考えがちな癖が原因であれば、ポジティブシンキングが出来るように改善するといった「ヒューマンスキル強化のためのトレーニング」をすることになります。
■うつ病再発予防策3・・・誰にも相談できず抱え続けているゴールが見えない問題に手を打つ
仮にヒューマンスキルに不足や改善点がなかったとしても、その人がうつ病に至った原因に他者との人間関係など、自分自身では対処できず、諦めて抱え続けている問題があれば、その原因に対してもなんらか対処が必要となります。たとえば、いじめやパワハラ、セクハラやストーカーなど、自身の力では解決できず、助けを求めらない状況で、被害を受け続ける人の心身の負担、不安感や恐怖感、行き場のない怒りなどをずっと抱え続けなければならない状況を想像して頂けるとわかりやすいかもしれません。
このような自身では解決できず抱え続けている問題は、人が原因のケースであれば、医師やカウンセラー、仲間やその問題を得意とする専門家などの第三者が直接対応もしくは協力し、「負荷をかける側の理解者」となった上で関係の改善、もしくは回避が必要になります。
抱えている問題は、相談しづらい、相談しても動いてもらえないといった状況から、うつ病になった主たる原因であっても、誰にも言えず、抱え続けてしまう可能性が高いです。欲しいのは、アドバイスではありません。動いてくれる人、力になってくれる人です。何でも相談できる存在、相談する価値のある人はどういう人なのか?というところを考える必要があります。
■うつ病再発予防策4・・・最後は実践で「もう大丈夫!」と言える力をつける
うつ病再発予防策2で解説したトレーニングは、あくまでもシミュレーションの範囲のため、職場や学校といった実環境での確認が必要になります。
実際にうつ病から回復しても、職場や学校復帰後に心身の負荷が重なり、長い期間症状を抱え癖のようになってしまったうつの症状が出ること、本人は、「来た」もしくは「来そう」と感じるタイミングがあります。そのときです。自分がどうするか?周りのサポートをどう得るか?トレーニングしたヒューマンスキルを見直さなければならないかもしれません。ゴールが目の前に見えているのであれば、頑張ってやりきるのもよいでしょう。やりきるではなく、一部は周囲のメンバーにフォローしてもらう必要もあるかもしれません。
復帰後は、周囲の人たちがしばらくは症状が出る可能性もあることを理解し、サポートをしつつ、これを繰り返し乗り越えることによって、自分自身で心身の負荷をコントロールできるようになり、真の完治を迎えます。
なお、このタイミングで気をつけなければならないのは、「会社や学校への歩みを止めさせないこと」です。歩みを止めてしまった後にまた戻ることは、大きなパワーを要します。会社や学校、行くのが辛く感じてしまう状況であっても、会議室でもいい、保健室でもいい、職場近くのカフェでもいい、味方として待っているから頑張っておいで!といったような声をかけることも大切です。
■再発の根絶に向けて
再発は、その症状以外に、もう2度と復活できなくなってしまうのでは?という不安を抱えやすく、症状を悪化させてしまったり、治療が長期化してしまう可能性も高まります。うつ病という孤独な闘いの長期化は、思考を狭め、自分の性格のせいだと自分を責め、自傷~自殺に至る可能性もある大変危険な病気です。
従来は、再発予防策1だけの対応で再発は予防できることが多い状況にありましたが、ビジネスも厳しくなるだけでなく、良好なコミュニケーションを取るのも難しい昨今、再発予防策2~4についても目を向ける、すなわち真の原因を追究し対処する必要性が、今後益々増えて行くと考えます。
そのため、何でも話せ味方となって動いてくれる存在が重要になってきます。
■うつ病克服者の想い
人は誰しも得手不得手、心身の負担の限界があります。
うつ病、その多くは決して弱いからではなく、「誰しもある心身の負担の限界」を超えたことにより、発症してしまったものです。
うつ病経験者は、一般的に弱いと見られがちですが、困難を乗り越えて真の完治を迎えた場合、人の痛みがわかり、自分の限界も知れる、越えられるという「強み」に変わること、そして、再発を防げるような環境作りはチームや組織力強化にもつながるということをご理解頂ければと思います。
《参考記事》
■都議会でのヤジ問題・・・大人は子どものお手本じゃない? 海老澤剛
http://sharescafe.net/39606788-20140629.html
■AKB48襲撃事件から学ぶこと 海老澤剛
http://sharescafe.net/39143060-20140601.html
■JR九州、事故現場写真LINE投稿事件の真の問題点。規律の緩みは大事故へもつながりかねないことを再認識しよう。 榊裕葵
http://sharescafe.net/39516361-20140624.html
■セクハラヤジは他人事ではない。職場でのセクハラ発言に気をつけよう。 榊裕葵
http://sharescafe.net/39561857-20140627.html
■「良いお母さん」のレベルが高すぎる日本。働く女性は意識と行動をどうやって変えたらいいの? 小紫恵美子
http://sharescafe.net/39261507-20140608.html
メンタルヘルスコンサルタント 海老澤剛
記事
- 2014年07月10日 05:00
うつ病を再発させないためのポイントは「症状だけでなく、真の原因に手を打つこと」 - 海老澤剛
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