第1回ワールドカップでは3位
じつは実績十分のアメリカ
もっともW杯の実績ではアメリカの方がはるかに上だ。アメリカは1930年に始まった第1回W杯に参加13ヵ国のうちのひとつとして出場、優勝ウルグアイ、準優勝アルゼンチンに次いで3位になっている。また、1990年のイタリア大会から今回まで7大会連続で出場し、ベスト8・1回、ベスト16・3回という成績を残している。これまでも一部のファンには支持されていたが、今大会で好試合を見せたことで多くの人たちがサッカーの面白さに気づいたのだろう。今後はアメリカ代表選手の主な供給源であるMLSに注目が集まり、人気でも4大プロスポーツに迫るかもしれない。
なお、日本やアメリカのようにサッカーと野球の両方に注目が集まる国はそう多くない。昨年行われた野球世界一決定戦WBCと今回のW杯に出場したのは9ヵ国。アメリカ、日本、韓国、オランダ、メキシコ、イタリア、オーストラリア、ブラジル、スペインだ。このうち、どちらも好成績を残しているのはオランダとアメリカだ。オランダは昨年のWBCで4位、今回のW杯もベスト4に残り、優勝の可能性もある。アメリカはWBCが6位でW杯がベスト16だ。ただ、オランダは野球の場合、選手の多くは野球が盛んな中米オランダ領出身。国の事情からくる有利さがあるわけだ。
両方強いといえるのは、やはりスポーツ大国のアメリカだろう。それとメキシコか。W杯は6大会連続でベスト16に入り、WBCも第1回で6位、第2回で8位になっている。サッカーのレベルが圧倒的に高く、「野球も一応やってはいる」というのはブラジル、イタリア、スペイン。サッカーの強化にも努めているが、野球の方が優勢なのは日本、韓国、オーストラリアだろう。ちなみに昨年のWBCで優勝したドミニカと準優勝のプエルトリコはW杯の予選には参加しているものの出場は一度もない。野球王国のキューバもW杯は1938年大会に一度出場しているだけだ。
まあ、全世界で人気のあるサッカーと一部の国しか盛んではない野球を並べて論じるのは意味のないことではあるが、両立させるのは難しいのだ。
日本は、その難しいことに挑戦しているわけだが、ファンは野球派とサッカー派に色分けされる傾向がある。ネットでも「野球の方が面白い」、「いやサッカーだ」といった論争が繰り返されている。アメリカはもっと複雑で、アメフト派、野球派、サッカー派などと微妙に好みが分かれるのかもしれないが、多くの人は、そんなことにはこだわらず「面白ければどれも観るよ」というスタンスではないだろうか。
スポーツ好きとしては野球とサッカーの両方が世界に挑戦するレベルにあり、その試合を日常的に観戦できる日本にいることは考えてみれば幸せなこと。どちらも楽しめばいいのである。