要因はいくつか考えらえる。ひとつは開催地ブラジルと時差が少なく視聴しやすい時間帯に試合が行われたこと。ポルトガル戦は米東部では夕方6時キックオフだった。また、ヒスパニック系を中心としたサッカーが盛んな国からの移民も多く、そうしたファンがW杯を機に顕在化したこともあるだろう。
人気上昇の素地があったところに
米国代表の健闘が火をつけた!?
ただ、それだけではこれほどの視聴者数にはならない。やはりアメリカ代表が観る者に感動を与えるプレーを見せたからだろう。グループリーグ第1戦ではアフリカのガーナに2-1とリード。なんとか追いつこうとゴールに迫るガーナを気迫あふれるディフェンスで止め続けた。第2戦ではクリスティアーノ・ロナウドを擁するポルトガルを相手に主導権を握る試合をし勝利寸前まで行った。後半アディショナルタイムに追いつかれてしまったが、強豪相手にも一歩も引かない戦いぶりは観る者に勇気を与えたはずだ。第3戦は優勝候補のドイツと対戦。この試合でもドイツの猛攻を受けたが1失点でしのぎ、同点に追いつこうとする必死の反撃を見せた。
決勝トーナメント1回戦のベルギー戦もアメリカの戦いぶりは見事だった。個の能力に優るベルギーが攻める時間帯が多かったが、アメリカは体を張って守り0-0で延長に突入。延長前半に2点取られたが、延長後半に1点を返すとその後も猛攻を続けた。最後まで勝負を諦めないアメリカの選手の姿は感動的でさえあった。こうした見ごたえのある試合をすれば、アメリカ人もサッカーを観るのである。
歴史や規模では大きな差があるが、先行する人気スポーツがあるところに比較的最近サッカーのプロリーグができたという点でアメリカと日本は似ている。アメリカは4大プロスポーツが隆盛を誇る中、MLSが1996年に10クラブで開幕した。日本は一番人気のプロ野球を追いかけるように1993年、Jリーグがやはり10クラブでスタートした。どちらも歴史は20年ほどだが、年を追うごとに規模は拡大しレベルもアップした。
日本はJリーグができたことによってW杯に出場できるまでにレベルアップし、2002年と2010年のW杯でベスト16に進出した時はサッカー人気も一気に高まった。アメリカはそれと同様の波が今大会に訪れたといえるかもしれない。