取り壊されることになった佐屋社会福祉会館。旧佐屋町時代に杉野図書館として建てられた=愛西市須依町で
|
 |
日本初のファッションショーを催し、東京に現在のドレスメーカー学院を創設したファッションデザイナー杉野芳子さんの夫で、理事長を務めた愛西市出身の杉野繁一さんが一九六六(昭和四十一)年に旧佐屋町に寄付してできた図書館の建物が近く、取り壊される。同市須依町にあり、現在は「佐屋社会福祉会館」として市シルバー人材センターが利用するが、解体後は防災倉庫が新たに建てられる。
杉野繁一さん(一八八七〜一九七三年)は、県内出身で初の首相となった加藤高明さんとともに、市中央図書館二階で功績を紹介するコーナーが設けられる地域の偉人だ。
杉野さんは六六年、理事長として運営を担った学院の創立四十周年を記念し、旧佐屋町に図書館建設のため一千万円を寄付。町立杉野図書館として開館した。
鉄筋コンクリート造り二階建て、延べ三百八十六平方メートル。現在の市中央図書館の建物ができた九五年以降は福祉関係団体が利用している。
今回の取り壊しは、市庁舎の新築に伴う周辺整備の一環。市シルバー人材センターは市永和出張所二階へ移る。跡地に建てられる防災倉庫は来年三月までに完成し、食料や毛布などを備蓄する予定だ。
愛西市の担当者は「老朽化して耐震改修が必要だった。建造物としての文化財的価値は見いだされなかった」と解体の理由を説明。杉野さんの弟の孫、正彦さん(61)=同市内佐屋町=は「取り壊しは時代の流れ。ドレスメーカー学院の礎を築いた人物を地元が生んだ。その歴史を知ってもらえれば」と話している。
(藤嶋崇)
<杉野繁一> 佐屋町史などによると、現在の愛西市内佐屋町で1887(明治20)年に生まれた。県第三中学校(現津島高校)に進んだが、卒業を前に建築家を目指して渡米し、スタンフォード大を卒業。現地のパーティーで知り合った芳子さんと結婚し、帰国した。米国で服飾を学んだ芳子さんが1923年の関東大震災から3年後の26年、動きやすい洋服なら震災で助かる命があったと思い、現在のドレスメーカー学院を開校。生徒数が増え、杉野さんも理事長として発展に努めた。
この記事を印刷する