財務省と経済産業省で異例の交流人事が相次いでいる。財務省は9日、予算編成を担う主計局の課長級ポストに初めて経産省から人材を受け入れる人事を発表した。国際金融部門トップの財務官を支える審議官級の副財務官(審議官級)にも初めて経産省出身者が就く。安倍晋三内閣は経済成長と財政再建の両立を目指しており、省益が対立しがちな両省の融和を人事で図る。
9日、経産省の経済産業政策局調査課長だった片岡隆一氏(93年入省)が財務省の主計局担当の参事官に就いた。課長級の新設ポストで、財政健全化に向けた戦略の企画・立案を担う。片岡氏は産業政策の効果を分析する手腕に定評がある。
財務省からは代わりに橋本真吾官房企画官(91年入省)が経済産業政策局産業構造課長に出向する。橋本氏は経産省で規制改革などを担う。
両省課長の交流は橋本龍太郎内閣当時の1996~98年に旧大蔵省と旧通産省が課長1人ずつを初めて交流させて以来、16年ぶりの復活となる。当時は橋本行革ビジョンに盛られた国家公務員の一括採用案をけん制する狙いとささやかれた。
為替介入や7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議などを担当する財務省の副財務官には経産省環境担当審議官の三田紀之氏(86年入省)が就く。三田氏は日本の輸出産業を背に米州課長や通商政策課長として対米交渉を担った経歴から円安論者とみられがちだが、電力・ガス事業部政策課長の経験もあり輸入燃料の価格上昇など円安のデメリットも知る。
財務省からは国際通貨基金(IMF)審議役の黒沢利武氏(85年入省)が経産省の貿易経済協力局審議官に出向する。
財政再建を重んじる財務省と企業の立場を代弁する経産省は法人税改革を巡る利害が対立する。今回の人事には実効税率引き下げの財源を増税で確保すべきだとの財務省と成長による税収の上振れに期待する経産省との溝を埋めたい安倍内閣の意志も読み取れる。
安倍晋三、橋本龍太郎、経産省、IMF