ところで、朝日新聞は以前から河野談話の欺瞞に気づいていて、慰安婦問題の論点のすり替えを画策していたと思わざるを得ない面がある。
2014年2月10日夕刊の文化・歴史欄の「歴史認識の根っこ」に、「日韓のズレ うつろう議論の重心 慰安婦問題 人権に力点」と題する、木村幹・神戸大学教授へのインタビューがある。
木村氏は「この問題には二つの顔がある。一つは『歴史認識問題』としての顔であり、もう一つは『女性の人権問題』としての顔だ」とし、「日本では慰安婦の動員に国が関与したかどうかといった点が主に議論されるが、韓国でのこの問題の主流は人権問題に移りつつある。だからこそ、海外の人権団体なども積極的に議論に参入している」という。
河野談話などの歴史認識問題は、日本と韓国との問題だが、女性の人権問題となると、時間的にも空間的にも一挙に普遍的な問題となる。最近の韓国での米軍慰安婦による国家賠償訴訟もこの流れに沿っており、日本占領時代の米軍や、ベトナム戦争での韓国軍の行為(ライダイハン問題など)も追及されなければならない。
先の朝日新聞の社説では、「もっとも大切なのは、元慰安婦たちの救済であることは論をまたない」とあるが、一体どのように救済すればいいというのか。一日も早く救済しなければならないのは、現在も東南アジアなどに存在する少女売春婦ではないのか。
■酒井信彦(さかい・のぶひこ) 元東京大学教授。1943年、神奈川県生まれ。70年3月、東大大学院人文科学研究科修士課程修了。同年4月、東大史料編纂所に勤務し、「大日本史料」(11編・10編)の編纂に従事する一方、アジアの民族問題などを中心に研究する。2006年3月、定年退職。現在、明治学院大学非常勤講師や、月刊誌でコラムを執筆する。著書に「虐日偽善に狂う朝日新聞」(日新報道)など。