国連から表彰・・・見事に「ペテン」にかかった中国人慈善家、自国メディアも痛烈批判を掲載「必然の結果」
2014-07-09 17:11
国連から授与されたと思い込んでいた「世界一の善人」との表彰状について、自ら「私はだまされていたらしい」と認めた中国人慈善家の陳光標氏に対して、北京紙の新京報は9日付で「“世界一の善人”の称号でだまされるのは必然だったのでは?」と題する文章を掲載。改めて同氏を批判した。 陳氏は1969年生まれ。江蘇省の出身だ。現在は江蘇黄埔再生資源利用公司の董事長(会長)を務める実業家で、中国赤十字の常務理事長なども兼任している。 6月25日には慈善活動のひとつとして米ニューヨークで「ホームレスを招待するランチパーティー」を実施。席上で、国連名義で陳氏を「世界一の善人」と認める表彰状の授与式が行われた。ところがメディアの取材に応じて陳氏が示した表彰状に書かれていた国連の英語表記が間違っているとの指摘が続出。陳氏も「私はだまされていたようだ」と認めた。 文章はまず、陳氏が「国連が認定した世界一の善人」の称号を得るために、3万ドル(約305万円)を支払ったと説明したことを問題視。「ホームレスを招待するランチパーティー」では、ニューヨークのホームレス支援団体の責任者が、陳氏は「4万ドルぐらいの費用をかけた」と証言したと論じ、慈善活動の実質的な経費に匹敵する金額を「表彰をされる」ために使ったとして、「陳氏が力を入れたのは、米国のホームレスを助けることではなく、メディア向けに自分を売り出すこと」と批判した。 陳氏が受け取った“表彰状”では、英語部分で国連が正しい<United Nations>ではなく、<s>を抜かして<United Nation>と書かれていた。 新京報の文章は陳氏について「英語が分からないようだが、某大学から授与されたという英国文学客員教授の証書を誇示していた」と指摘。今回の事態について「まず言えることは、ペテン師が陳光標をだましたのではないということだ。陳光標は自分自身をペテンにかけていたのだ」と表現した。 文章はさらに「善行というものは、なにか特殊な利益、または名を残したいという欲望のために行われた時、大失敗の原因になるものだ」と主張。「なぜなら、自らの内面から出発した行いでなければ、他人に操作されてしまう。互いに取り引きをすることになるからだ。取り引きがあれば、ペテン師がつけこむこともある」と、陳氏がだまされたことについて「自業自得」との見方を示した。 文章は「とにかく、慈善や公益事業といものは、『真』、『善』、『美』という土台の上に立脚していなければならない。土台が『偽』、『大ぼら』、『空虚』であってはならない」と主張。陳氏の慈善について常に批判の声がついて回ることについて、立脚点がおかしいからこそ「やることなすこと、慈善や公益事業にどれだけ関係しているのか、議論の絶えることがないのだ」と批判した。 ********** ◆解説◆ 新京報の文章は「才譲多吉(公益事業従事)」という人物の署名原稿。簡易投稿ブログの微博(ウェイボー、中国版ツイッター)で陳氏批判を続けている人物がおり、同一人物と思われる。才譲多吉はチベット人風の名(漢字表記)だが、才譲多吉は微博で、「チベット族ではない」と表明している。 ただし、文章には中国の仏教徒がよく口にする論法の影響が感じられる。中国では漢族の間にもチベット仏教の帰依者が増えている。チベット仏教関係者によると、「社会の急速な発展に心がついていけなくなった人が多くなっているから」という。 才譲多吉もチベット仏教に帰依または共感を持っている漢族の可能性がある。才譲多吉氏は微博で自らを「北京感恩公益基金会の発起人」と紹介しているが、同会の幹部名簿に「才譲多吉」の名はなく、いずれも漢族風の姓名が並んでいる。(編集担当:如月隼人)