【ソウル＝共同】韓国の旅客船セウォル号沈没事故で、発生当日の４月16日、修学旅行で乗っていた高校生が「全員救助された」との誤報を多数の韓国メディアが伝えたのは、テレビ１社が確認せずにうわさを速報し、他社がこの報道だけを根拠に追随したためだったことが９日までに、分かった。

　韓国政府機関の不正を調べる監査院が、事故への対処を監査した中間報告として明らかにした。報道機関にも公金から補助金が出ているため、対象に含めた。

　沈没では誤報が続出しメディア不信が高まった。中でも「全員救助」報道は救助当局の緊張感を低下させた可能性もあると指摘されており、批判が続きそうだ。

　監査院によると、最初に速報したテレビ局は生徒が多数乗船していた檀園高校で「救助された」との話を聞いたとしているが、誰の発言かも分からないという。この速報を受け、他の主要各局が情報源を明示せずに次々と追随した。

　遅れて誤報を出した局の関係者は「現場の記者は『そのような情報はない』と本社に伝えたのに、速報に遅れたと焦った幹部の判断で報道が出た」と話した。

　監査院は最初に報じた局を明らかにしていないが、野党はＭＢＣテレビだと指摘し、誤報の原因究明のため幹部の国会出席を要求している。

　テレビ各局は、謝罪はしたが、誤報の原因を視聴者に示していない。メディア側からは監査院や国会が報道の経緯を調べるのは不適切との声も出ているが、世論の支持は得られていない。