このページでは映画「渇き。」とその原作である「果てしなき渇き」の違いについて書いて行きたいと思います。
映画と原作のネタバレを含みますので、その点、ご理解頂いた上でこの先を読み進めて下さいませ!
映画の登場人物ほど原作の登場人物は狂っていない
映画「渇き。」に登場する藤島昭和や藤島加奈子は特に狂いに狂っているように演出がされていました。
また、藤島昭和の元部下である浅野であったり、実業家チョウ(趙)に雇われていたオダギリジョー演じる愛川も狂いに狂っていた人物であると言えます。
しかし、原作を読んでみると、それぞれの登場人物にはもっと共感できる人間的な部分があり、また、どういう背景があって、そのような人格形成に至ったのかが説明されているため、納得出来る点も非常に多いです。
ですが、映画の方ではまるで加奈子が生まれつき悪魔のような子であるかのような演出となっており、また、加奈子の父、藤島昭和はことあるごとに人を怒鳴りつけたり暴力をふるったりと過剰な演出がされていますが、原作ではそれほど二人は狂ってはいません。
藤島昭和は加奈子が中学時代に当時、抱えていた事件のことや酔った勢いもあって、映画の中でも原作の中でも加奈子を襲ってしまいますが、これ以外の部分では映画で見せていたような狂気っぷりはあまり見受けられることはありませんでした。
藤島加奈子も心に闇を抱えるようになったそもそもの原因はやはり、実の父である藤島昭和に中学生時代に襲われたことがきっかけということが原作の中ではよく伝わってきましたし、また、映画の中であったような加奈子が藤島昭和に襲われるシーンでからかうといったこともなかったのです。
また、チョウに雇われていた愛川の嫁を藤島昭和が襲うシーンも映画の中ではありましたが、あれは原作の中ではありません。
また、オダギリジョー演じる愛川ですが、原作を読むと彼は元々、自分の子供が難病にかかっており手術や入院代でお金が回らず、消費者金融からお金を借りていて、そういったお金に苦労しているという背景があって、チョウとの関わりが始まったということも伺い知ることが可能です。
このように、映画「渇き。」の中では狂いに狂った登場人物の存在が目立ち、とてもそれらの人間に共感出来る部分はありませんでしたが、原作の方ではそれらの登場人物にはもっと人間味があり、彼らの歪んだ人格を形成するに至った背景や彼らの心情に共感出来る部分がありました。
細かい設定が原作と映画では異なる
映画と原作ではストーリーが進む順番が若干異なったり、また、細かな設定が異なったりする部分がチラホラとありました。
例えば、いじめられっ子のボク(瀬岡)は加奈子に誘われたパーティーで、松永らが連れて来たイジメっ子グループの島津に対して、ボーガンで顔に矢を撃つように指示され、それにボクは反抗して島津を救い逃げようとする場面があります。
その場面でボクはパーティーで飲んでいた酒や薬が周り、その場で倒れ、結局、その場にいた男にボーガンに緒方の手を添えられ、弓を引くかたちとなり、ボクは島津の顔に向かってボーガンの矢を放つことになってしまうのです。
こういったシーンは映画にはありませんでしたが、原作ではホテルにボク(瀬岡)が連れて行かれる前段階において、こういった場面が差し込まれたいたりします。
他にも映画の中ではボクに対する島津らのイジメが松永によってストップしますが、実は緒方が自ら命を絶つ1ヶ月ほど前からも動揺に緒方へのイジメはなくなっており、こういったところも緒方とボクが同じ結末を迎えることにおいて、共通する部分として原作ではあったのです。
また、他には映画では問題の写真が入っていたのが長野から預かったロッカーのキーで開けることが出来るロッカーでしたが、それが、コンビニで命を奪われたカメラマン志望の専門大学生の男が乗っていたバイクのシートであったり、松永が石丸組を裏切った理由が映画で言われていたように加奈子に松永が惚れたからという訳ではなく、原作では単純に「極道がもともと嫌いだったから」という理由となっています。
更に、原作の中では藤島昭和の元妻「桐子」も実は藤島昭和が加奈子が中学校時代に襲っていたことを知っていたことを示唆する場面もあったりと、原作の中では加奈子の担当医師だけではなく、松永もチョウも藤島昭和に加奈子が襲われていたことを知っていました。
加奈子が藤島昭和に襲われていたことが、複数の人物によって原作の中では度々語られていたため、原作の中では加奈子が悪魔のような存在になった理由をこうして主張していたように感じられました。
加奈子は派手に悪行を行なっていた
原作の中では加奈子が松永が所属する不良グループ「アポカリプス」をバックにしていることをいいことに、予備校で薬をやっていたり、薬を他の予備校生に売りさばいたりと結構、派手に悪行を行なっておりました。
映画の中では加奈子は謎めいた感じだったため、どのように加奈子が長野や東先生の娘「晶子」をそそのかしてウリをさせたり、長野に関しては薬漬けにしたのかわかりませんでしたが、原作での加奈子の派手な悪行の行ないっぷりを見ていると、なんとなく、長野や晶子が加奈子に巻き込まれて行ったのかも分からなくは無かったです。
藤島昭和は咲山と盃を交わし外兄弟になっていた
映画の中では石丸組の若頭である咲山に藤島昭和が生き延びる選択肢として、実業家チョウ(趙)が雇い入れている愛川という刑事の命を狙うように提案をされ、その提案を藤島昭和は受けて、実際に愛川の命を狙いに行きます。
そして、映画ではその後、藤島昭和と咲山の関わりについては触れられていませんでしたが、原作の中では咲山は藤島昭和が娘の為に復讐を実行するというところが気に入り、藤島昭和と咲山は盃を交わして外兄弟となっています。
また、藤島昭和は石丸組と関連のある沢渡組に預けられ、極道の道を歩むことになっていました。
ボクはイジメっ子グループと同じ野球部で良きライバルだった
映画の中ではボクがいじめられっ子であった理由がいまいち分かりませんでした。
一応、映画の中でもいじめられっ子のボクがイジメっ子の島津と同じ野球部であったことを示唆するシーンは短いですが登場しますが、そこからは、なぜ、ボクが島津らにイジメを受けることになったのかを読み取ることは出来ません。
しかし、原作の中ではその経緯が詳しく描写されておりました。
島津もボク(瀬岡)も同じ野球部に所属しており、その野球部は大変厳しく、レギュラー争いも非常に過酷で、そんな野球部の中でも島津とボクは二人ともレギュラーの座を得ていたのでした。
そして、その野球部では部活を休むことなど全く許されることもなく、休めば周りから軽蔑され、また、練習中に水を飲むだけでも他のメンバーから見下されるような過酷な野球部だったのです。
しかし、ボクは親戚の不幸で学校を休まねばならなくなり、一時的に部活への参加が出来なくなります。
しかし、それがきっかけとなり、今まで毎日参加していた過酷な練習から一旦離れてしまったボクは次第に野球から遠ざかって行ってしまうのです。
そして、最終的にだれ始め、野球部の過酷な練習にもついて行けなくなってきてしまったボクは監督に自ら退部(転部)を申し出て、野球部を去ることになったのです。
ですが、この野球部では脱落していったものには非常に厳しく、過酷な練習に必死について行った者たちにとっては、脱落者は腹立たしい存在でもあり、野球部を辞めて行ったボクは良きライバルでもあった島津やその仲間にイジメを受けるようになってしまったのです。
映画の中ではボクこと瀬岡は弱々しい少年でしたが、原作の中のボクはみっちりと厳しい野球部の練習で鍛えられた少年で映画の中のボクとは印象が異なり、本来ならばとてもイジメを受けるような少年には思えないほどです。
このように映画の中では詳しく触れられていなかった、ボクこと瀬岡がイジメを受けることになった背景が原作では描写されておりました。
加奈子がどのように緒方の復讐を果たそうとしていたのか?
原作の中では加奈子がどのようにして緒方の復讐を松永やチョウに対して行なおうとしていたのかがよくわかります。
チョウはパチンコ屋を経営している実業家なのですが、実は裏ではウリを斡旋するグループを運営しています。
そして、このグループを運営している目的は投資であり、チョウには新都心と国道17号線を結ぶ区画に大きなショッピングモールを誘致するという計画があるのですが、その周辺の地主である柿崎という男を誘致計画に取り込む為に柿崎に対して、女の子を斡旋していた訳です。
しかし、加奈子はその柿崎の家や事務所にウリのグループの客達の写真を送りつけて、そのチョウの計画をブチ壊したという訳です。
また、写真を送りつけられてしまった他の客達は石丸組に相談を持ちかけ、石丸組はチョウの身柄を追うことになりますが、最終的にチョウは石丸組らによって命を奪われることになります。
また、松永も石丸組から流してもらっていた薬を勝手に加奈子やチョウのグループにも流しており、石丸組を裏切っていたため、石丸組の怒りを買い、悲惨な目に遭わされることになったという訳です。
加奈子が松永やチョウに近づいた当初から、このような復讐計画を描いていたとは思えませんが、彼らの諸々の事情を知った加奈子は次第にこういった復讐計画に辿り着いて、実行に移して行ったのかもしれません。
まとめ
さて、こちらの記事では映画「渇き。」と原作「果てしなき渇き」の違いについて、私が気になったところをピックアップしてご紹介して行きました。
実際は他にも細かい部分で映画と原作では異なる部分はありますが、全てを書いていくと長くなり過ぎてしまうので、重要と思われる部分のみをピックアップしてみました。
是非、あなたも映画「渇き。」を見た後は原作の「果てしなき渇き」の方も読んでみて下さいませ!
きっと、映画の内容をもっともっと理解出来るようになるはずです。
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