前回のラストで「次回からはもう少し足を地に着けた話に戻ろうかと思います」と書いておいて申し訳ないのだが、今回は政治の話をする。集団的自衛権を巡る政府の態度だ。
実のところ、集団的自衛権を行使可能にするということそのものは、私はあまり大きな問題だとは思っていない。調べてみると、集団的自衛権と憲法とのすり合わせは、歴史的にかなり揺れていて、これまでも可能という解釈の時期もあったし、そうでない時もあった。
今回の件は、対中国の外交カードだろう。現在、東アジア地域では、中国が対外的に権益拡大の態度を取り、日本だけでなくフィリピンやベトナムなどとも摩擦を引き起こしている。現在この地域は、ポーカーでいえば、お互いの顔色をうかがいながらチップを積み上げる局面に入っている。日本の場合、そんなチップの1枚が、集団的自衛権だといえる。そこには、この地域の安定のために、より強く米国を関わらせるという意図がある。
場の緊張を、釣り上げるだけ釣り上げると何かの拍子に破局、すなわち戦争に至る。が、通常はその前に外交交渉で場を収める動きが始まる。その動きが出た時に相手に対して優位を保てるかは、チップを積み上げる段階でどれだけうまく立ち回ることができるかで決まる。安倍政権は、集団的自衛権というチップを積んだ方が、日本が有利になると判断したのだろう。
そのことに異論のある人もいるだろう。が、これは選挙によって信任された政治家が組んだ内閣の判断だ。異論があるなら次の選挙で自由民主党と公明党に投票しなければいい。
私が違和感を感じたのは、この問題が政府内で合意に至った際、7月1日の記者会見における安倍首相の発言だ。
この発言は安全保障は国対国の問題である、と安倍首相が認識していることを示している。
確かに、最近の東アジア情勢は、国対国の形で安全保障に関する問題が進行中だ。しかし、特に、2001年9月11日の同時多発テロ以降、安全保障は国対国の国権や領土といった問題のみならず、もっと広く「国家が国民の生命、財産、権利を守る」という問題となったのではなかったろうか。
日本政府の対テロ対策が不十分だと言うつもりはないが、今の政府は、安全保障という問題を、国対国という狭い領域のみで考えているのではなかろうか。
そして、安全保障を広く捉えるなら、今の日本の政策は、ずいぶんと不十分で穴だらけということが見えてくる。
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