■ 準決勝の1試合目W杯は準決勝に突入。第1試合は過去に5度のW杯制覇を経験しているブラジルと、西ドイツ時代を含めて3度のW杯制覇を経験しているドイツの対戦となった。長い間、両国がW杯の舞台で対戦経験がないことが「サッカー界の七不思議」と言われてきたが、2002年の日韓W杯の決勝で初めて対戦してブラジルが2対0で勝利した。それ以来の顔合わせなので2度目の対決となる。
ブラジルは「4-2-3-1」。GKジュリオ・セーザル。DFマイコン、ダビド・ルイス、ダンテ、マルセロ。MFルイス・グスタボ、フェルナンジーニョ、ベルナルジ、オスカー、フッキ。FWフレッジ。準々決勝で負傷したMFネイマールは欠場で、守備の要であるDFチアゴ・シウバも出場停止。ということでチームの核となる2人を欠く非常事態で、DFダンテとMFベルナルジがスタメンで起用された。
対するドイツは「4-1-2-3」。GKノイアー。DFラーム、ボアテング、フンメルス、ヘーヴェデス。MFシュヴァインシュタイガー、ケディラ、トニ・クロース。FWミュラー、クローゼ、エジル。36歳のFWクローゼがスタメンで、ここまでの5試合で4ゴールを挙げているFWミュラーは右サイドに回った。FWクローゼはGLの2戦目のガーナ戦でゴールを決めてW杯の通算ゴール数が15になった。
■ 7対1でドイツが圧勝試合は序盤こそ互角だったが、前半11分にドイツが右CKを獲得すると裏でフリーになっていたFWトーマス・ミュラーが合わせて先制に成功すると、前半23分にも複数人の連動から最後はFWクローゼが決めて2点目を挙げる。2002年の日韓W杯も経験しているFWクローゼはこれでW杯通算16ゴール目。15ゴールで並んでいた元ブラジル代表のFWロナウドを抜いて史上最多となった。
勢いに乗るドイツは前半25分にMFトニ・クロースがミドルシュートを決めて3点目を挙げると、前半26分にもMFトニ・クロースが決めて4点目。さらに直後の前半29分にはFWエジルのパスからMFケディラが決めて5点目を挙げる。MFトニ・クロースは先制ゴールもアシストしているので2ゴール1ゴールの活躍で、実に4ゴールに絡んだ。前半は5対0とドイツがリードして折り返す。
後半に入ると決勝を見据えてドイツがペースを落としたため、ブラジルが攻め込む展開となる。後半の立ち上がりから何度も決定機を作ったが、GKノイアーの壁を破ることができずにいると、ドイツは後半24分と後半34分に途中出場のFWシュールレが決めて7対0とリードを広げる。ドイツ代表ではジョーカー的な存在になっているFWシュールレは今大会3ゴール目となった。
終了間際にブラジルはMFオスカーが決めて1点を返すが、反撃は1点だけ。7対1という誰も予想できなかった大差でドイツが圧勝して決勝進出を果たした。ここ最近のドイツは「W杯やユーロの準決勝で敗れる。」ということが多かったので、一種の鬼門になっていたが、これ以上ない最高の形で打ち破った。13日(日)に行われる決勝戦の相手はアルゼンチンかオランダのどちらかとなる。
■ ここ何年かでは最大の衝撃「ドイツがやや有利」という声が多かったが、それでもブラジルはブラジルである。しかも、「開催国」という最大級のアドバンテージを持っている。「緊張感が漂う拮抗した試合になる。」と思われたが、まさかの展開となった。年間に何百試合もサッカーの試合を観ているが、ここ何年かのうちではもっとも大きな衝撃を受けた試合であり、何と表現すればいいのか分からない。
決勝トーナメントに入ると「点差」というのはあまり意味を持たなくなる。PK戦で負けても、1点差で負けても、2点差で負けても、5点差で負けても「敗退」に変わりはないが、大差で敗れると、その分だけ精神的なダメージは大きくなる。こういう展開になったとき、「失点を重ねることは覚悟した上で攻めに出る。」という選択肢もあるとは思うが、それをチョイスするのは非常に難しいことである。
ブラジル代表の活動であったり、選手のキャリアというのは「今回のW杯で終わり」というわけではない。すぐに次の戦いが始まるので、同じ負けであったとしても、「1点差負け」と「6点差負け」は全然違ってくる。ブラジル代表クラスの選手になると、こんな屈辱的な点差で負けた経験は無いと思うので、立ち直るまでに時間が必要で、これ以上ないほどショッキングな試合になった。
■ ベロオリゾンテの惨劇1950年のブラジルW杯のときはウルグアイに敗れて優勝を逃した。「マラカナンの悲劇」と言われているが、今回のドイツ戦は「ベロオリゾンテの惨劇」として長く語られるだろう。主力2人を欠いたとはいっても、ここまでボコボコにされるブラジルを観るのはもちろん初めてのことで、サッカー王国のブラジルが為す術なくやられるところを見続けなければならないというのは非常に辛かった。
日本人だけでなく、欧州の人たちも、アフリカの人たちも、南米の人たちも、世界中の人たちがブラジルあるいはブラジルサッカーあるいはブラジル代表に対しては特別な感情を持っていて敬意を払っている。どうしようもないほど強くて、上手い選手が揃っているのがセレソンだったが、「ブラジル代表とドイツ代表の間には如何ともしがたい大きな差があった。」と言わざる得ない。
もちろん、MFネイマールとDFチアゴ・シウバがいたらもっといい試合になっていた可能性はある。ただ、根本的な部分で大きな差があったので、「ドイツが勝って、ブラジルが負ける。」という結果は変わらなかっただろう。この2人はそれぞれのポジションでは世界最高クラスの選手で今回のW杯でも輝いているが、「2人がいたらブラジルが勝った。」とは全く思えない。
ドイツが2点目を奪ったあたりからスタジアムの雰囲気も、選手達の表情もおかしくなって、立て直すことができないままで失点を重ねた。連続失点はザックジャパンの悪癖だったが、これだけの選手が揃っているブラジルでもこんなことになってしまう。少なくとも0対3というスコアになった時点でスコラリ監督が手を打つべきだったと思うが、ベンチもフリーズしたのか、動きは無かった。
W杯の舞台で7失点というのも滅多にないことであるが、ドイツが奪った7つのゴールのほとんどが完璧にパスワークで相手の守備網を崩した形から生まれており、やられ方も半端なかった。自国開催のW杯で優勝だけを目標に掲げてきたブラジル代表である。ほとんどの国民がブラジルの勝利を信じて試合を見守っていたと思うが、ブラジルサッカー界にとって衝撃的な一日となった。
■ 4度目の世界一に王手一方のドイツは凄まじかった。後半は押さえ気味にプレーして何度もピンチを招いた。後半の内容に関してレーヴ監督は納得していないと思うが、前半の45分間のパフォーマンスは文句のつけようがないものだった。ここまでの5試合はイマイチらしさが出ておらず、南アフリカW杯のときと比べると魅力的なサッカーとは言えなかったが、お釣りがくるような圧巻のパフォーマンスだった。
どの選手も見事なプレーを見せたが、やはりFWクローゼである。全盛期の頃のスピードやジャンプ力は見られない。消えている時間も長くなったが、ツボを押さえたプレーでチームに貢献している。W杯通算で16ゴール目となったが、15ゴールで並んでいた元ブラジル代表のFWロナウドが見守る中、ブラジルを相手に通算ゴール記録を塗り替えたというのは何ともドラマチックな話である。
これでドイツの決勝進出が決まったが、決勝戦の相手がオランダになったとしても、アルゼンチンになったとしても、ドイツが勝つ可能性が高いのは明らかである。オランダにはFWロッベン、アルゼンチンにはFWメッシがいるが、ドイツの守備陣を1人でぶち破るのはFWロッベンやFWメッシでも難しいだろう。1990年のイタリアW杯以来となる4度目の世界一が見えてきた。
パスサッカーを基本とするドイツ代表が勝利したことはサッカー界にとっては好ましい。今回のブラジルは堅守速攻型のチームだったが、それ以外にも今大会は堅守速攻型のチームが軒並み好成績を残している。「パスサッカーは古い。」という意見も増えていたが、最後の砦と言えるドイツがサッカー王国のブラジルを撲殺したことで、再び、風向きが変わるのではないか。
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