米国立公園に気候変動の強い影響
2014年07月09日
PHOTOGRAPH BY MICHAEL NICHOLS / NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE
米国の多くの国立公園は、過去数十年の間にすでに極端な気候変動に曝されている。新しく発表された研究で政府機関の科学者らは、思い切った対策を取らなければ、この傾向はさらに加速するだろうと警告している。
気候変動の影響により、国立公園を訪れる観光客の楽しみや自然と文化的資源が損なわれる可能性が大きい。
7月2日付けで「PLOS ONE」誌に発表された研究で、国立公園局の研究者らは国立公園289カ所の1901年から2012年までの天候記録を調べ、その期間における推移を過去数十年間の傾向と比較した。
論文の筆頭著者でコロラド州フォート・コリンズに住む国立公園局研究者、ビル・モナハン(Bill Monahan)氏は研究の結果、過去10~30年の間に多くの国立公園で気候が激しく変化していることがわかったと述べた。
著者らによると、国立公園の現在の気温は、過去のデータと比較して、年間平均気温、一年で最も気温の低い月の最低気温、そして最も気温の高い3ヶ月間の平均気温を含む複数の基本変数において、最も高くなっている。
過去数十年の間に、今回調査した国立公園の81%で極端に高い気温が観測されているとモナハン氏は述べる。それが特に顕著なのは、アリゾナ州グランドキャニオン国立公園、カリフォルニア州セコイア・キングズキャニオン国立公園、ケンタッキー州マンモス・ケーブ国立公園、そしてバージニア州アポマトックス・コートハウス国立歴史公園だ。
過去112年間の降雨量については、気温に比べ公園ごとの差が大きいことがわかったが、モナハン氏によると過去数十年の間に27%の公園で極端な旱魃が起きている。カリフォルニア州モハベ国立自然保護区やネバダ州とアリゾナ州にまたがるレイクミード国立レクリエーションエリアはかつてないほど乾燥しており、一方、ノースカロライナ州ルックアウト岬国立海岸やニュージャージー州とペンシルベニア州の州境にあるデラウェア・ウォーターギャップ国立レクリエーションエリアでは、極端に降雨量が多くなっている。
◆観光客への影響
この研究結果は、今後、国立公園を訪れる観光客は多くの変化を受け入れなければならないという警告を発するものだ。国立公園の気候はこれまで以上に暑く乾燥するか、場所によっては雨がますます多くなり、氷河の形作る素晴らしい景観が失われ、植物や野生動物がダメージを受け、水位が上昇すると予想される。
たとえば、海面が上昇し、暴風がさらに激しくなると、バージニア州ジェームズタウンの文化遺跡や考古学遺跡は打撃を受けるだろう。ウェストバージニア州メアリーランドのチェサピーク&オハイオ・カナル国立歴史公園では洪水が増え、歴史的な橋や水門、記念碑が破壊されるかもしれない。
グランドキャニオン国立公園では、これ以上乾燥が進めば、野生動物の生存を支える天然泉が枯渇する可能性がある。
Brian Clark Howard, National Geographic News
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2014年07月09日
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