その日のまえに 後編 あらすじと感想 どこまでも優しく温かいドラマでした
重松清さん原作の【その日のまえに】の後編を視聴しました。期待通り実にほのぼのと温かくて、気持ちの良いドラマでした~。以下早速簡単なあらすじ(ネタバレ)です。
妻=和美の「その日」を知らせる着メロにパッヘルベルのカノンを設定しておいた健輔。
真夜中にその着メロが鳴って病院に連絡すると、今すぐという状態ではないからと言われたらしく、翌朝に皆で病院へ行くことになりました。
出かける前にクローゼットを開けた健輔は、そこに掛っていた喪服を見て、在りし日の和美との会話を思い出します。和美はそこに、自らしたためた「遺書」を隠していたらしいのです。
遺書なんて縁起でもないと怒る健輔に対し、でもその縁起でもないことは和美にとっては不可避であり、だからこそ和美は、この世から消え去るその日のために、今、自分の気持ちを伝えておかねばならないのだと主張します。
「生きる」ために希望を持ち続けて頑張ることは辛い。むしろ「死」を前提に覚悟を決めてその準備に励んでいる方が落ち着く。
人間の生き死にに関しては、神様でさえ自由にならないと諦めたらしい和美だけれど、ただ一つだけそれでも神に祈っていることがあると言います。
「『その日』を気持ちのいい秋晴れの日にしてほしい」
そんな日なら、笑って旅立てそうな気がするの。
そう言っていたにもかかわらず、実際にやってきた「その日」はどんよりと曇っており、皆は傘を手に病院へ行くことになりました。
その道すがら、下の子の健哉が手にしたその傘でタンポポの綿毛を飛ばそうとした際、上の子の大輔が厳しくこれを咎めたシーンも印象的でした。大輔には、今そこで健気に繋いでいる命が、母のそれのように思えたのでしょう。健哉は健哉で、種を遠くに飛ばしてやろうと思ったらしいのですけどね。
種はまだ飛びたくないと思っているかもしれないよ。
そんな会話を交わしながら病院へ着いた皆を待っていたのは、もう目覚めることのない和美の姿でした。まだ息はあったものの、子どもたちの必死の叫びに和美が応えることはもうありません。
こちらも急いで駆けつけてきたらしい両親の呼びかけに、す~っと一筋の涙を流した和美は、そのまま息絶えてしまいました。しかも外はすっかり雨模様で、もし「その日」が秋晴れの好天だったら自分も神様を信じると言っていた健輔の期待が見事に裏切られてしまいます。
その後、和美が死んだからと言って、彼ら親子の日常が大きく変わることはありませんでした。子供たちは相変わらず学校へ行かねばならないし、健輔もまた、仕事をして生きていかねばならないのですが、この健輔の方は新規の仕事をすべて断っているという有様です。勤め人ならともかく、自分の会社なのに~と思わぬでもありませんでしたが、和美を失った健輔の心の傷はそれほどまでに深かったようです。
あいつが喜ぶ顔が見たくて描きつづけていたのかも。
和美が旅立ってちょうど3か月が経ったころ、和美が入院していた病院の看護師長が健輔を訪ねてきました。和美が書いた手紙を預かっていたので届けに来たと言うのです。和美は何度も何度も書いては捨てを繰り返した末に、ようやくその手紙を書き上げたそうです。
「そろそろ忘れるかな~という頃=死後3カ月経ったら渡してほしい」
そう和美は言ったそうです。
いったい何が書いていあるのか~健輔ならずとも気になるところでしたが、そこにはたった一言こう記してあっただけでした:
「忘れていいよ」
日常に流されて妻を忘れてしまうのが寂しい~そう考え始めていた健輔のために、和美はその背中を優しく押してくれたのです。可哀想だ、申し訳ない、などと思うことはないのよ。忘れてくれていいのよ、と。
こうしてようやく一区切りつける決心をした健輔は、以前から打診されていた「お盆の花火」のポスターを描く仕事を引き受けます。この依頼人=石川(吉田鋼太郎)もまた旧友をガンで亡くし、今年はその初盆になるから、友を迎える「迎え火」に、友が迷うことの無いように、大きな花火を上げたいと考えたそうなのです。
そのポスターを健輔に依頼してきたのは、健輔が以前描いたトートバッグのイラストがきっかけだったそうです。その亡くなった友人の住所を知らなかった石川のために、友人の妻がトートバッグに骨壺を入れて訪ねてきてくれたそうなのです。
温かくて幸せそうな家族の様子が描かれたそのイラストを描いた健輔なら、友人を迎える花火大会のポスターを描くのにふさわしい~そう石川は確信したのですね~。実際に描きあがったポスターには、花火を見上げる和美がモデルに描かれておりました
。
健輔は子どもたちを連れてその花火大会へと足を運び、実に盛大に打ち上げられた花火を見上げながら、生前和美が手配した後、健輔も続けて取り寄せることにした無農薬の野菜~トマトを皆で頬張ります。それまでずっと嫌いだったトマトを、健哉が「美味しい!
」と食べていた姿は、きっと「初盆」で帰ってきた和美の目にも映っていたことでしょう
。
永遠の別れは確かに辛いものだけれど、人が生きてきた証は、その家族や仕事、目に見えるもの見えないもの~いたるところに残っている物です。何かにつけて「絶対」が口癖だった和美もまた、子どもたちの中にしっかり生きておりました。
「お兄ちゃん、絶対言ってた!」「絶対に言ってないっ!!
」
「その日のまえに」は見終わった後、自然と笑顔になれる、そんなどこまでも優しく温かいドラマでした。来週~4月6日から始まる「珈琲屋の人々」も今からとても楽しみです。
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