W杯史上に残る大差での決着になる予感は、試合開始の笛が鳴った直後からあった。ブラジルは何でもないパスがつながらない。守備でもむやみに前に出ては、ドイツに裏を突かれた。11人全員が前しか見ていないかのように、視野が狭かった。
エースのネイマールが負傷で離脱。主将のチアゴシウバは出場停止。替えの利かない大黒柱の2人を欠いていた。おまけに相手は最大の難敵ドイツ。開催国のプレッシャーを両肩にずっしり背負っていた選手にとって、試合前から押しつぶされそうな心境だったのだろう。
11分、ドイツのCK。ニアサイドにブラジルの選手がぎっしり詰まっていたのに、その後ろはがら空きだった。フリーになったドイツのミュラーに先制点を決められると、重圧と焦燥でブラジルは崩壊した。
23分、ミュラーが右から中央へパス。カットを狙ったボランチが飛び出す。大きく空いたスペースに向かって、ミュラーが真横にランニング。再びボールを受けると、クローゼに送り、ドイツが2点目を決めた。
1分後、SBラームのクロスからMFクロースが3点目。2分後には敵陣でボールを奪って再びクロースがゴール、3分後に中央突破からもう1点。6分間で5点差まで開き、試合は事実上終わった。
「1失点目の後、チームは制御できなくなった」とブラジルのスコラリ監督。2002年日韓大会を制した百戦錬磨の指揮官でさえ、これほどの混乱は想像できなかった。失点の直接の原因はFWフッキのボールロストや、DFラインの乱れ、ボランチの無理な飛び出しなどだが、これらはもともとあった弱点。早く点差を詰めようと心理的なバランスを失ったことで綻びは大きな穴となった。
肉弾戦に持ち込まれず、普通にサッカーをさせてもらえれば、優位に立てるという自信があったはずだ。数分、プレーしただけで、それは確信に変わったのではないか。
「明確な意思を持って試合を進めることができた…続き (7/9)
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