避難計画、形だけ/トイレや階段、収容面積に算定 青森
東北の原発立地自治体で策定が進む事故時の避難計画には、実現性に乏しい内容も含まれる。避難所設営では、1人当たりの占有面積の算定にトイレまで組み込むなど、数字合わせに終始した印象は拭えない。「まさに絵に描いた餅」。自治体の担当者からは自嘲気味の声が漏れてくる。
<現場確認せず>
東北電力東通原発(青森県東通村)の30キロ圏内に位置する青森県横浜町。原子力災害時には、町民5000人が弘前市の県武道館に避難する計画を立てる。
武道館の延べ床面積は1万8206平方メートルあり、1人当たり3.3平方メートル以上を占有できるが、あくまで単純計算にすぎない。床面積にはトイレ、プロパンガス庫、シャワー室、階段などが含まれる。居住可能なスペースに限定すれば、占有面積は大幅に減る。
避難計画は青森県から示された施設データに基づいて組み上げられた。町の担当者は「策定前に現場確認はしていない」と明かす。
避難所設置計画には、受け入れ側の自治体も関与を免れない。青森市は非常時、むつ市と東通村の計6万人の受け入れを求められている。
避難所の一つとなる市文化会館には最大2700人を収容する。居住スペースに使えるのは会議室や控室、ロビーなどを含めても5100平方メートルにとどまる。
1人当たりは畳1枚程度の1.89平方メートル。手荷物の多さによっては避難者が横になるのも厳しい。青森市の担当者は「延べ床面積で県から収容数を割り振られた」と不満を隠さない。
<見直しは必至>
青森県原子力安全対策課は「計画は完成形ではない。詳細は関係自治体と協議して詰める」と説明する。見直しは避けられず、実効性確保の道のりは長い。
おざなりとも言える避難計画が生まれる背景には、過酷事故が起きないという自治体側の慢心が見え隠れする。
東北電女川原発を抱える宮城県。自治体関係者の一人は「国は安全な原発を動かすと言っている。使われるはずのない計画策定に真剣に向き合えないのも仕方ない」と言い放った。
2014年07月09日水曜日