福島第1原発事故:裁判外解決手続き 賠償一律半額に

毎日新聞 2014年07月09日 07時30分(最終更新 07月09日 09時35分)

原発ADRによる和解成立事例
原発ADRによる和解成立事例

 ◇「迅速な処理を優先した」被災者救済置き去り

 東京電力福島第1原発事故の賠償問題を裁判外で解決する手続き(原発ADR)を担当する「原子力損害賠償紛争解決センター」が、避難中に死亡した人の遺族に支払う慰謝料を低く抑え込んでいることが分かった。死に至ったいくつかの要因のうち、原発事故の与えた影響の度合いである「寄与度」をほぼ一律に「50%」と決め、ほとんどのケースで慰謝料を半額にしていた。センター側は、中には満額支払うべきケースもあったが「迅速な処理を優先した」と説明しており、被災者の救済が置き去りにされている実態が浮かんだ。【高島博之、関谷俊介】

 センターの実務を担う文部科学省の「原子力損害賠償紛争和解仲介室」で、今年3月まで室長を務めた野山宏氏(裁判官出身、現在は宇都宮地裁所長)が、毎日新聞の取材に「50%ルール」の存在を認めた。

 原発ADRは被災者側の申し立てを受け、「仲介委員」と呼ばれる弁護士が和解案を作成。被災者と東電の双方に提示し、両者が受け入れれば和解が成立する。約260人いる仲介委員はそれぞれ独立しているが、複数の関係者によると、個々のケースでばらつきが生じないよう、仲介室と相談して和解案の内容を決めることが多い。

 野山氏の説明によると、原発事故翌年の2012年前半、一部の「有力な仲介委員」(野山氏)をセンターに集め、「死亡慰謝料に関しては、十分な証拠調べをしていない点を考慮し、寄与度を大体50%としよう」と提案し了承を得た。

 センターがホームページで公表している和解成立案件のうち、死亡慰謝料に関するものは26件。このうち、寄与度が記載されている11件のうち10件は50%で、金額は700万〜900万円だった(残る1件は90%、1620万円)。また、11件以外に、毎日新聞が遺族に取材して確認した事例でも、センター側は死亡による慰謝料を1800万円と算定したうえで、「寄与度は50%」として東電の支払額を900万円とする和解案を示していた(和解成立)。

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