カーブ、スライダー、シンカー、またチェンジアップなどが前者に属する。わが国独特の呼称であり分類だとされるシュートも、右打者の内角へ向かっていくという性質から名付けられたと推測すれば、そうなるだろう。
後者グループの話をすると、ヤンキースのマー君が使う最大のウイニングショットであるスプリッターは、リリースされたボールが打者の手元で真っ二つに引き裂かれて(スプリットして)スイングを避けるという魔球ではなく、ボールを挟んだ指のことを裂け目のようだ、と形容しているわけである(スプリット・フィンガード・ファストボール)。この球種の大分類であるフォークも、同様に指のかたちを食事に使うフォークになぞらえたものだ。懐かしのプロ野球ギャグ漫画『かっとばせ!キヨハラくん』では、カイアンツのエース・クワタがフォークとボールを同時に投げるという魔球を使ったことがあった。
ナックルというのも、ボールに爪を立てるような独特の握り方から、拳という名称を与えられたものだ。パームという、あまり使われないチェンジアップ系のボールがあって、手のひらで包み込むような握りの珍しさからそう命名されたのだろう。
先に挙げた分類上でいう前者に、後者の要素が加えられた名称もある。サークルチェンジというのは、打者に向かって円運動(サーキュラー・モーション)しながら手元で沈む変化球ではもちろんなく、親指と人差し指でOKのサインのように円を作る握り方の特徴を示している。ナックルカーブというのも、揺れながら大きく曲がるような、まさに魔球を連想してしまうが(これについては少し前まで日本人には真面目に誤解していた人も多かっただろう)、握りがナックル風というだけのカーブである。わたしは『スター・トレック』についてぜんぜん詳しくないが、このシリーズに登場する宇宙人の身体的特徴から名付けられたバルカンチェンジというチェンジアップのバリエーションもあるらしい。
スクリューについては、リリースの際にスクリュー・ドライバー(ネジ回し)を使うときのような捻りを加えるからだとか、リリースされたあとのボールの回転を形容しているからだとか、大昔の野球では変化球そのもののことが総称としてスクリューボールと呼ばれていただとか、様々な説を耳にしたことがある。カット・ファストボール(カッター)は、Wikipediaの記事を読むとリリース時の感覚に由来しているようである。
最初からWikipediaを読めば良いではないかと思われるかもしれないが、実はあんまりこういった記載はないのである。