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ソニーのVAIO分社化が完了。パソコンの手離れで市場の関心はいよいよTV事業へ

 ソニー経営再建の焦点となっていたパソコン事業分社化がひとつの節目を迎えた。投資ファンドに売却された同社のパソコン事業部門は2014年7月1日、VAIO株式会社として再スタートを切った。マイクロソフトのWinodwsを搭載した製品にラインナップを絞り、販路も大幅に縮小する。

新会社はわずか240人。本社は長野県安曇野市に置き、基本的に生産は台湾などに委託するが、検品などは国内で実施するという。

 VAIOは90年代、斬新なデザインで人気を博し、一時は全世界で1000万台近くを販売したこともある。その後、タブレットやスマホの台頭で販売が低迷、テレビ事業と並んで、赤字を垂れ流す同社のお荷物部門となっていた。

 同社は2014年5月、投資ファンドである日本産業パートナーズにパソコン事業を譲渡することを正式に発表。ソニー本体から分離し、今回、新会社として事業をスタートすることになった。同事業に携わる社員1100人のうち、約4割が退職し、240人は新会社に移籍。残りはグループ会社などに配置転換した。

 VAIO新会社は、Winodws搭載マシンにラインナップを絞り、完全にパソコン専業メーカーとなる。また、これまでVAIOをたくさん販売してきた大手量販店経由での販売は行わず、個人向けにはソニーマーケティング経由の直販に限定する。法人向けには、大塚商会、シネックス、ソフトバンク、ダイワボウなど、法人に強いディーラーと代理店契約先を締結するという。

 新会社の初年度の目標出荷台数はわずか35万台。昨年は600万台近くを販売していたことを考えると、実質的にゼロに近い。この台数で個人向けに本格展開するという戦略はあり得ないので、法人ルートの開拓をこれから行っていくというのが現実と考えられる。

 VAIOはこれまで消費者向けにブランド力で販売してきた製品であり、法人がVAIOを積極的に購入するかどうかは何ともいえない。名前の上がっているディーラーは、皆、販売力のあるところばかりだが、当然、他のメーカーとの競争になるため、価格面などでよほど有利な条件を提示しないと、積極的に取り扱ってもらえないだろう。とにかく小規模メーカーとしてきめ細かい顧客対応を行うことで生き残っていくしかない。

 新会社の前途は極めて厳しい状況だが、このことはソニー本体からみれば、リストラの大きな山を越えたことを意味している。VAIOはこれで完全にソニーの手を離れた状況となり、市場の注目は、もうひとつの焦点であるテレビ事業の再生へと注がれることになる。

 ソニーは4Kテレビに注力する方針を掲げているが、地上波が対応しないことから、市場はあまり盛り上がっていない。大ヒット商品を作り出し、そこから得られる利益に依存するという、従来の同社の戦略を変えない限り、パナソニックとの差は広がる一方となる可能性が高い。

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