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首相 日豪EPAなどに調印
7月8日 18時11分

首相 日豪EPAなどに調印
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オーストラリアを訪れている安倍総理大臣は、アボット首相と首脳会談を行い、集団的自衛権の行使容認を閣議決定したことを説明したうえで、EPA=経済連携協定などに調印し、安全保障や経済面での協力を一層強化していくことを確認しました。

安倍総理大臣は、日本時間8日午後、オーストラリアのキャンベラで、アボット首相との首脳会談に臨みました。
この中で、安倍総理大臣は、集団的自衛権の行使容認を閣議決定したことを説明したうえで、国際社会や地域の平和と安定に貢献していく考えを伝えたのに対し、アボット首相は歓迎する考えを示しました。
そして、両首脳は、両国間の貿易・投資の自由化を目指すEPA=経済連携協定と、防衛装備品を共同開発するための協定に調印し、安全保障や経済面での協力を一層強化していくことを確認しました。
また、海洋進出を強める中国を念頭に、力の行使または強制によって東シナ海および南シナ海の現状を変更する、いかなる一方的な試みにも反対することや、TPP=環太平洋パートナーシップ協定の早期妥結に向けて、協力していくことでも一致しました。
このあと、両首脳はそろって記者会見に臨み、安倍総理大臣は「両国の関係が新たな特別な関係に至ったことを確認した。オーストラリアと同盟国のアメリカと緊密に連携し、国際社会の平和と安定、および、繁栄の確保に、これまで以上に積極的に寄与していく。今後、日米豪の共同訓練や人材交流の拡充、人道支援、災害に関する協力の強化に取り組んでいく」と述べました。
また、アボット首相は「日本は、戦後ずっと『法の支配』の下で行動をとってきた模範的な国際市民であり、安倍総理大臣は、議会で『過去の教訓は絶対忘れない』と言っていた。日本が普通の行動をとることを歓迎する」と述べました。

「必要であれば対策」

林農林水産大臣は閣議のあとの記者会見で、「実際に締結されて発効したあと、どういう効果や影響が出るのか、しっかりと見極めつつ、必要であれば対策について検討していくことになる。生産者が引き続き意欲を持って経営を続けられるよう、農業や畜産業の構造改革や生産性の向上によって競争力の強化を推進していきたい」と述べました。

「信頼関係間違いなく深まる」

菅官房長官は午後の記者会見で、「首脳どうしの交流を通じて、両国間の信頼が間違いなく深まるだろう。日本とオーストラリアは同じ価値観を持つ国であり、連携しながら、自由、平等、そして、繁栄という基本的な価値を共有できるように、安倍総理大臣の豪州訪問を機に、民間レベルでも交流を深めていきたい」と述べました。

日豪EPAの内容・牛肉

日本とオーストラリアとのEPAでは、農産物や工業製品の関税の取り扱いのほか、資源の安定調達など幅広い分野のルールが盛り込まれています。
まず、日本が輸入牛肉にかけている38.5%の関税については、EPA協定発効後の1年目から段階的に引き下げることになりました。
このうち、国産牛肉と競合しやすい冷蔵の牛肉は、発効後1年目は6%下げて32.5%とし、2年目、3年目は1%ずつ、4年目以降も毎年減らし、15年かけて23.5%まで引き下げます。
加工用に使われることが多い冷凍の牛肉は、発効後1年目は8%下げて30.5%とし、2年目に2%、3年目に1%、その後も毎年減らし、18年かけて19.5%まで引き下げます。
一方、国内の生産者への影響を抑えるため、輸入が一定の量を超えた場合に一時的に関税を引き上げる、「セーフガード」と呼ばれる緊急措置を導入します。
この措置を発動する基準は、協定を発効したあと、1年目の輸入量が、冷蔵の牛肉で年間13万トン、冷凍の牛肉で19万5000トンを超えた場合で、今後、10年かけて、基準になる輸入量を拡大することにしています。
また、牛肉の加工品の一部には、一定の輸入量に限って通常よりも低い関税を適用する枠を設けます。
このうち、牛タンやハラミなどの関税は、協定発効後の1年目から、現在の12.8%から7.6%に引き下げます。
日本が輸入している牛タンのうち、オーストラリアからのものがおよそ3割となっていて今後、価格が下がることも見込まれます。

チーズ

日本が輸入する、プロセスチーズの原料については、現在の29.8%の関税を無税にする枠をオーストラリア向けに新たに設け、協定発効後の1年目は4000トン、20年かけて2万トンへと段階的に拡大します。

オレンジ

オレンジについては、冬に生産が盛んな日本のかんきつ類の農家への影響を抑えるため12月から5月にかけては現在の32%の関税を維持します。
一方、6月から9月の4か月間については現在16%の関税を段階的に引き下げ、10年かけて撤廃します。

自動車

オーストラリアが日本から輸入する自動車にかけている5%の関税については、協定発効後すぐ、または3年で撤廃されます。
このうち、排気量1500ccから3000ccの乗用車などにかかっている関税は協定が発効したあとすぐに撤廃されます。
また、3.5トン以下のワゴンタイプの商用車などは3年で関税が撤廃されます。
日本からオーストラリアへの自動車の輸出額は、去年(2013年)1年間で7484億円と、国や地域別でアメリカとEU=ヨーロッパ連合に次いで多くなっていて、関税の撤廃によって、輸出の拡大が期待されます。

資源

日本にとってオーストラリアは、LNG=液化天然ガスの最大の輸入相手でもあるほか、鉄鉱石や石炭なども多く輸入しています。
こうした資源に対して日本は関税をかけていませんが、協定には、資源を安定的に調達する観点から、オーストラリア側がやむをえない事情で資源や食料の輸出を制限する際には、日本側に事前に通報するルールなどが盛り込まれています。

日本の潜水艦技術に期待

オーストラリアは今回、日本との間で防衛装備品を共同開発するための協定に調印したことで、今後日本による潜水艦技術の協力に期待しています。
オーストラリアは太平洋やインド洋などの広大な海域を抱えていますが、アメリカのアジア重視政策、いわゆるリバランス政策でオーストラリアの重要性が増すなか、オーストラリア国内には海軍力の強化を求める意見が出ています。
オーストラリアのシンクタンク、ローウィー研究所のローリー・メドカーフ氏は「海軍力を強化する上で潜水艦は重要な技術の1つだ。世界でも優れた潜水艦の技術を持つ日本との連携はアジア太平洋地域の安定につながる」と話しています。
一方、オーストラリアにとって中国は最大の貿易相手国でもあることから、中国との関係に悪影響を与えかねないとして、今回のような日本との連携強化には懐疑的な意見も出ています。
アジアの安全保障問題に詳しいオーストラリア国立大学のヒュー・ホワイト教授は「日本とオーストラリアが中国に対抗するために連携することはむしろ中国を扱いにくくする」と指摘しています。

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