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【学校教育課】 可児市の外国人児童生徒教育

更新日:2012年10月19日

外国人児童・生徒の現状


 可児市は岐阜県南部に位置し、名古屋まで電車でおよそ1時間の通勤圏内にあります。市内には岐阜県最大の工業団地を有し、近隣市にも大手企業が位置しています。1990年に入管法の改正で日系二世・三世に、定住者・永住者での査証が取れるようになり、外国人登録者数は急増しました。これを受けて、可児市では平成12年に「国際化施策大綱」を策定し、「外なる国際化から内なる国際化」へと方向転換し、可児市民として外国人を広く受け入れる方針を打ち出してきました。

 平成24年5月現在で外国人居住者は5,760人で,市全体の人口101,485人の5.7%を占めています。国籍別ではブラジルが3,048人(外国人人口の52.1%)と最も多く,フィリピン1,887人(32.8%),中国383人(6.7%),朝鮮・韓国254人(4.4%),ベトナム 49人(0.9%),ペルー45人(0.8%)と続き,その他に25ヶ国の外国人が居住しています。

 公立小中学校に在籍する外国人児童・生徒数は,平成24年5月現在で357人,全児童・生徒数の4.2%となっています。そのうち日本語指導を必要とする児童生徒数は322人です。国籍別ではブラジル221人(外国人児童生徒の61.9%),フィリピン123人(同34.5%)となっています。平成20年秋のいわゆるリーマンショック以降,多くのブラジル国籍の住民が帰国しましたが,最近はフィリピンから入国する児童・生徒が増加傾向にあります。

  • 外国人児童生徒数の推移

外国人児童・生徒学習保障事業

(1) 事業を立ち上げた経緯

 可児市では、平成15~16年度に「外国人の子どもの教育環境に関する実態調査」を実施しました。その結果、約7%の不就学の子どもがいることをはじめ、外国人の子どもの教育について様々な問題が浮かびあがりました。また、調査結果等から不就学になる要因として、

  1. 経済的困窮
  2. 言葉の壁や習慣・文化の相違への不適応
  3. 教育に対する保護者の意識の差異

などがあげられました。そして、次のような課題が明らかとなりました。

  1. 市全体での系統的・組織的な指導体制の整備
  2. 人材(通訳・指導者)の確保
  3. 指導カリキュラムの整備と指導教材の開発
  4. 教員の指導力の向上
  5. 外国人児童・生徒教育に関する相談体制の確立

 外国人児童・生徒の実態とこれらの調査結果をふまえ、平成17年4月に策定した教育施策が「外国人児童・生徒の学習保障事業」です。


(2) 事業内容

 この事業は、入国間もない外国人児童・生徒の実態に即してカリキュラムを設定し、スモールステップで子どもたちの生活・学習支援を行うプログラムです。『ばら教室KANI』は、本事業の立ち上げと同時に、公立の施設としては国内で初めてつくられた初期日本語指導教室です。カリキュラムは日本語教育と算数・数学の指導を中心にしつつも、食生活や日本の学校生活への適応や体験学習も大切にしています。

【ステップ(1)】初期日本語指導教室『ばら教室KANI』での生活・学習支援

 初めて日本の小中学校へ就学する外国人児童・生徒を対象に、学校教育で必要な生活指導や初期日本語指導を集中的に行います。

【ステップ(2)】在籍小中学校「国際教室」での生活・学習支援

 『ばら教室KANI』を修了した児童・生徒等を対象に、中・上級の日本語指導を行いながら、学齢に応じた教科指導を支援します。

【ステップ(3)】在籍学級での生活・学習支援

 国際教室の課程を修了した児童・生徒を対象に、それぞれの実態に応じて通訳サポーターや巡回指導員等が教科学習等を支援します。


(3)「ばら教室KANI」における学習・生活支援

 「ばら教室KANI」は,来日して初めて小・中学校に編入する児童・生徒を対象としています。小学校の近くにある元診療所の建物を活用し,平成 17年4月に開設しました。それ以降,平成24年3月までの7年間にのべ430名の児童生徒が通室し,371名が修了しました。平成24年5月現在で26 名(フィリピン24名,ブラジル1名,日本1名)の子どもたちが学んでいます。指導スタッフは,室長,外国人児童生徒コーディネータ,指導助手(2名)の4名の職員で対応しています。

 初期指導では,基礎的な日本語指導だけではなく,学校生活に適応できるトータル的な指導を行うことが重要です。学校のきまりやルール,マナーなど規範意識をはぐくむ生活指導,当番活動や清掃活動など日本の学校生活に関する指導,日本の文化や習慣に関する指導,食生活への適応等,多くの要素が含まれますが,これらを日常の指導の中で包括した実践に留意しています。一方では,多くの不安や悩みを抱える保護者との連携を密にとりながら,積極的な教育相談にも努めています。


(4)各小・中学校「国際教室」等における学習・生活支援と国際教室担当者会を通じた指導力の向上

 国際教室は,外国人児童・生徒の多い学校に設置され,現在,市内の小学校4校と中学校2校に合計12教室あります。「国際教室」における外国人児童・生徒の学習指導を充実させるために,日本語教育加配教員に加えて,市費の通訳サポーター9名と巡回指導員1名,県からの適応巡回指導員(非常勤)2名が指導・支援にあたっています。

 カリキュラムは各校の児童・生徒の実態に応じて編成されますが,中級・上級の日本語指導に加えて,算数・数学,英語,社会などの教科指導においても実践がなされています。JSLカリキュラムの基本的な考え方を足場として,その時々の児童・生徒の実態や教育ニーズに応じた授業展開が図られている。年5回開催される「国際教室担当者会」では,各校での実践や開発した教材についての情報交流を行ったり,授業研究を行ったりしながら指導力の向上に努めています。


(5) 予算

 平成24年度の「外国人児童・生徒学習保障事業」に関わる予算は次の通りです。

  • 通訳サポーター・巡回指導員等人件費    17,866千円
  • 「ばら教室KANI」運営事業           11,436千円
  • 「ばら教室KANI」整備事業                56,230千円

※県費負担の加配教員・非常勤講師・外国人児童生徒適応指導員の人件費を除いています

  • ばら教室KANIの学習
  • ばら教室KANI校外学習

事業の成果と課題


 約7年間にわたるこれまでの事業の取組によって,次のような成果が認められました。

  • 「ばら教室KANI」での初期日本語指導の実施と国際教室等との連携により,学校生活への適応に戸惑いが少なくなり,安定した学校生活を送っています。修了した児童・生徒が在籍校を中途退学するケースはほとんどなくなってきました。
  • 過去20年間で公立小中学校に在籍する外国人児童・生徒数は10倍近くに急増しましたが,国際教室等の担当者や関係機関が連携を図りながら,関係職員の指導力向上に努めるとともに,一人一人の実態や教育ニーズに応じた適切な指導を行うことができました。
  • 就学先が不明な児童・生徒に対しては,学校教育課担当職員や外国人児童・生徒コーディネータ等が市民課との連携を図る中で,定期的な実態調査を行うとともに,不就学が疑われるケースについては,郵送による確認調査や家庭訪問・就学相談を実施することにより,不就学の外国人児童・生徒は極めて少なくなってきています。
  • 日本の幼稚園・保育園に通園していない就学前の児童に対しては,市国際交流協会が平成22年度よりプレスクール「ひよこ教室」を開設し,日本語や学校生活に関する就学前指導を実施していただき,スムースな接続に成果をあげています。
  • 今年度中に「外国人の子どもの就学支援基金」を活用し、老朽化した建物を解体し現在の場所に新たに「ばら教室KANI」の建て替えに着手しています。

 一方で,次のような課題があげられます。

  • 近年,増加傾向にあるフィリピンからの入国編入の児童生徒への支援体制を強化しつつありますが,まだ十分であるとは言えない状況です。ポルトガル語対応が中心となっていた通訳サポーターの配置を外国人児童生徒の在籍状況に応じて,段階的に見直していく必要があります。
  • 一人一人の将来の夢や希望を大切にしながら進路指導が行われ,日本の高校・大学への進学を希望する生徒が増加しています。外国人生徒の進学率は,53.3%(H19)→56.7%(H20)→79.2%(H21)→72.1%(H22)→77.8%(H23)と全体的には増加傾向にあります。しかし,入国間もない生徒に対する進路先の門戸は狭く,生徒・保護者の実態やニーズに十分対応できないケースが少なくありません。平成20年度以降,可児市国際交流協会では現役中学生を対象とした「きぼう教室」,義務教育の就学年齢を超えた子どもたちを対象とした「さつき教室」を開設し,それぞれの進路の実現に向けての学習支援をいただいています。国際教室等における教科指導のいっそうの充実と学力の保障,人的環境の一層の充実や多様なニーズに対応しうる教材整備と教育情報の共有化の推進が課題です。
  • 発達障がい,学習障がい,愛着障がい等が疑われる外国人児童生徒に対する学習支援プログラムについては,先行研究が進んでいない分野であり,本市においてもまだ十分なデータが得られている状況にありません。しかし,これまでの調査・研究や指導実践を通して明らかになってきた内容については,関係職員で情報を共有しながら,具体的な指導に生かしていきたいと考えています。
  • 保護者・地域・学校,事業所,県国際課や市国際交流協会,大学等の研究機関,市民課・子ども課,子ども相談センター等との相互連携の基盤は確立されつつあります。関係職員の資質や指導力の向上を図る研修の充実を図るとともに,関係機関との情報の共有化にいっそう努めたいと考えます。

  • ばら教室KANI
  • 国際教室

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