高級和牛・神戸ビーフの欧州連合(EU)への輸出が8日から始まる。食の本場への進出に生産農家や流通業者の期待も高いが、懸念もある。欧州ですでに「KOBE」のブランド名で定着している海外産の高級牛肉「WAGYU」の存在だ。「本物の味」をどう根付かせるか、業界は頭を悩ませている。

■欧州では「最高産牛肉」の名前に

 モナコ公国のステーキレストラン。メニューに「アルゼンチン産アンガス種」などと並んで「KOBE STYLE」の文字があった。100グラム約8千円だ。

 「チリ産で、和牛ではありません。でも、欧州では最高級牛肉を『KOBE』と呼んできました」。経営する食肉卸会社「ジラウディ」のアジア担当、滝谷敏美さん(31)は言う。

 畜産農家を支援する業界団体「中央畜産会」(東京都千代田区)は2月、解禁に先立って欧州で市場調査をした。参加した大分大の大呂興平准教授(経済地理学)によると、ロンドンやパリの高級百貨店の食品売り場には「KOBE BEEF」や「WAGYU」の看板があり、その下に豪州産やチリ産と表示された牛肉が売られていた。価格は100グラム3千円台で、神戸ビーフの日本国内価格とあまり変わらなかった。

 高級牛肉が「KOBE」と呼ばれるようになったのは、江戸末期に横浜の外国人居留地で、神戸から届いた牛肉のおいしさが評判となったためといわれる。

 農林水産省畜産技術室などによると1991~98年、240頭の和牛や精子が米国に輸出された。その一部が豪州に渡り、アンガス種と交雑して「WAGYU」や「KOBE」として飼育されるようになったらしい。大呂准教授によると4年前、豪州だけで約14万頭の「WAGYU」が飼育されていたという。

 流通業者によると、育て方は広大な牧場で大量に飼う豪州式が基本。長期肥育やエサの工夫など一部で日本流を採り入れているものの、生産コストは神戸ビーフの3割程度だ。肉質も赤身が中心だが、「KOBE CUISINE」「MASTER KOBE」などの名前で世界中で売られている。

 「欧州では、神戸を地名ではなく牛肉の『品種』だと誤解している人が多い」。独ミュンヘンで和食レストランを経営してきた大矢健治さん(41)は言う。

この記事に関するニュース
  • レコメンドシステムによる自動選択