Financial Times

英国のEU離脱を警戒するアイルランド

2014.07.08(火)  Financial Times

(2014年7月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

アイルランド政府の「国家リスク評価2014年」草案――将来について考えることで知られていない同国で珍しく先を考えた文書――の5ページ目には、簡潔でいくぶん気掛かりな図が掲載されている。アイルランドが今後直面するかもしれないリスクを経済、地政学、技術、社会、環境という5つの大まかなカテゴリーに分類したものだ。

 特定された4つの地政学的リスクの中で、際立つリスクが1つある。それは「英国と欧州連合(EU)の関係とスコットランドの国民投票の結果を巡る不確実性」だと書かれている。「いわゆるブリグジット(Brexit、英国のEU脱退)が選択された場合、英国とアイルランドの関係に深刻な不確実性をもたらす恐れがある。同様に、独立の是非を問うスコットランドの国民投票の結果は、北アイルランドに不安定化要因をもたらす可能性がある」という。

 一言で言えば、1998年の聖金曜日協定の調印が北アイルランドに脆弱だが息の長い平和をもたらし、英国との関係を変質させて以来、アイルランドが直面している最大の外交課題があるということだ。

 20世紀のほとんどの期間を通じ、アイルランドは両国関係の中でまず間違いなく脆弱なパートナーだった。アイルランドは、より貧しく、より孤立し、英国からの分離後の国家意識について不安を感じていた。だが、EUへの加盟と、より最近では北アイルランドでの和平合意が、アイルランドにより大きな自信を与えている。今では脆弱性は英国の側にあると主張する向きもある。

 「今、英国の政治にはほとんど急進的とも言える非常に大きな不安定性がある」と元アイルランド首相で元駐米EU大使のジョン・ブルートン氏は言う。英国のEU離脱は「アイルランドにとって非常に深刻な事態となる。両国関係に混乱を招く多くの要因をもたらすだろう」と同氏は主張する。こうした要因は、40年以上にわたり、共通の利害という意識の高まりによって大きく軽減されていたものだ。

多面的に結び付いた特別な関係

 アイルランドと英国の関係は、2つのレベルで機能している。1つは、政治的、外交的、経済的なレベルだ。英国はアイルランドの最大の貿易相手国だ。北アイルランドは共通の問題だ。両国の間には、他のEU諸国でシェンゲン協定が締結されるずっと以前から、パスポートなしの往来が行われていた。

 もう1つは、文化的、歴史的、個人的なレベルだ。アイルランドのエンダ・ケニー首相が数カ月前、英国アイルランド協会でのスピーチで述べたように、「我々の関係に関しては、型にはまったところや『ノーマル』なところは何もない。比較できる基準が何もないのだ。歴史、文化、人、経済、土地、沿岸の近さがこのような形で絡み合っている関係は欧州の他のどの2国間にも存在しない」

 アイルランドにとって危険なのは、そうした見方が過度にアイルランド中心になっていること、そして、アイルランドが英国に肩入れしているほどには英国がアイルランドに肩入れしていないかもしれないことだ。

 ブルートン氏は、最近の英国とアイルランドの会合で、…
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