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『オール・ユー・ニード・イズ・キル - 』 - 死に続けてネクスト・ステージ - 1953ColdSummer

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『オール・ユー・ニード・イズ・キル - 』 - 死に続けてネクスト・ステージ


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ール・ユー・ニード・イズ・キル
EDGE OF TOMORROW
2014(2014)/アメリカ/G 監督/ダグ・ライマン 出演/トム・クルーズ/エミリー・ブラント/ビル・パクストン/他 原作/桜坂洋/『All You Need Is Kill』 
日本原作、トム・クルーズ主演。
戦う、死ぬ、目覚める―。



「今の記憶を保ったまま、子供時代に帰ってみたい」
 そんな事を戯れに、或いは真剣に考えたことがある人の数はかなり多いであろうと睨んでいて、事実、わたくしめも、もし今の記憶を保持したまま子供に戻る事が出来たらば、いかに策を弄して金満家への道を敷くかとあられの無い妄想に浸って1日を無駄にし、子供時代からまた遠ざかるなど時の河の奔流にうしろ髪ひかれ苦渋を舐め続けること幾星霜、そろそろ現在、未来に目を向けるべきではあるまいかとの気付きに至り、世界を直視すべくトム・クルーズと戸田奈津子が再三タッグを組んで提唱する『オール・ユー・ニード・イズ・キル』を観てきたのじゃが、はな地球はギタイというエイリアンに襲撃されているし、ギタイの血を浴びておくたばりになったトムさんはおくたばりになるたびにタイムループを繰り返すようになるし、未来もなかなか捨てたものではないなと思いました。

 ダグ・ライマンだかダグ・リーマンだかハッキリしろというのはアマンダさんがセイフライドなのかサイフリッドなのかという疑問と並んで長年私の脳髄のどうでもいい部分を占めているのだけれども、どうにもこうにもこのダグさんの拵える映画は自分と平仄が合わぬことが多く(『Mr.&Mrs. スミス』くらいかね面白かったのは)、日本のライトノベル、ラノベ原作というのを売りにしている割にはエンドクレジットに原作者桜坂洋の名前も無く、そこら辺は何らかの大人の事情があるのだろうと察するものとして、とても察しているとは思えない阿呆のような顔をしてこれを観ていた私は主に視覚的な事前情報から、『スターシップ・トゥルーパーズ』☆ミーツ☆『プライベート・ライアン』のごときものを期待していたのだけれども、それを期待するのならばそのふたつをカウチポテトで観ればいいだけの話であり、執拗に死に続けるトムさんの一兵卒から古参兵へと変わりゆく表情になにごとかを読み取らんければならんかったのである。

 とは言い条、ひとつだけよく分からん点があった事を除けば(たぶん分かっていないのは自分だけだと思うが)喧々諤々と考察/口舌の刃を振るうようなものでもなく、直前に死んだ折の記憶を引き継いで目ぇかっ開くトムさんことウィリアム・ケイジのスキルアップって言えばいいのかな経験値継承って言えばいいのかな、小気味良く、段取り良くなっていくその様は既視感の破壊、小規模な物語の終焉を何度も何度も追体験させてくれるやうでありまして、筒井康隆の『ダンシング・ヴァニティ』があまり合わなかった自分にも反復の約束事の面白さが少し分かりかけてきたところで。

 反復自体のサスペンドならば『ミッション:8ミニッツ』(感想)なんかも記憶に新しける範疇だとも思うし、『バタフライ・エフェクト』のインパクトは私的な映画体験の中でも十指に入るやも知れぬしそれに続編がふたつもあった事はさっさと忘れたいし『今日も僕は殺される』(感想)なんつう映画のことは忘れたし、元々ループものというジャンルは嫌いではないしかと言ってループ映画ばかりをねちこく観るようになったらそれはビョーキというものであるが、死ねばリセット、且つセーブ済みで前回の記憶を引き継いでゲーム感覚で憶えゲーとばかりに戦場を攻略していく様子は、特定の年代に取ってかけがえのない記憶をレイプ、じゃなかった、鼓舞してくれるものであろう。あ、駄目だった? じゃ殺すからやり直しね、バッキューン! というコンティニューに一切血が通っていない描写も含めてゲーム的である、つう意見にまで異を唱えるほど私も捻くれていないつもりである。「戦場の牝犬(ビッチ)」との異名を獲るリタことエミリー・ブラント演じる女ソルジャーとの連携なんて、1プレイヤーと2プレイヤーの共同作業、今で言うマルチプレイ的なTPSめいた趣があり、あ、殺られた、ちっきしょう、と、ひと、にんげんの死、ないし自死にまで昂りが薄れてゆく様子は何かしらの尊厳をば奪われてゆくようです。

 広告業界を失業し、メディア担当として軍属の端っこに居たトムが戦場に追いやられ、初等兵として身にまとう機動スーツ。「ドッグ」「タンク」「グラント」と名付けられたそれらのパワード・スーツは、実際に57キロほどの重量があり、脱着に30分掛かっていたほどの厄介なシロモノであったそうで、この話も前話題として一部を賑やかしましたね。このスーツは事実上の外骨格のごときもので、ペーペーなトムを守ると同時に重しでもあり、物語前半の殻として肉体と精神をバインドする。話が上手げに転がり出してからは主体的にスーツを脱ぎ捨てることも出来、脱皮したトムはすっかり古強者の相貌となりて機転と知恵を用いギタイの秘密に迫る。う~む大リーグボール養成ギプスならぬ救世主養成ギプス。対するエイリアン・ギタイはと言えば前日ヒンズースクワットをしながら『もののけ姫』を観たせいか知らんが、出来の悪い祟り神のそのまたパシリのように見えてしまい、あまり攻撃方法に説得力(だいたい画的な迫力)が感じられなんだのと、戦場の描写自体が割ともっさりしておるのでギタイが機動スーツの魅力を引き立てるには力及んでいなかったかなぁ……つうのは個人的に残念なところである。

 一悶着ありそうなラストに、解釈の幅はあれどスパッとキマって見えるのがトム映画のイイトコロ。原作ではボーイ・ミーツ・ガールを全面に押し出している、つう話をどこかで読んだ気もするし読んでいない気もするのだけれども、タイムリープをくぐり抜けてきただけにトムさんには1日に30時間の鍛錬という矛盾どころではない人生経験が集積されている。ハリウッド一流の翻案としてはこの演出で花マルなのではないでしょうか。あとまったくの余談で申し訳ないことしきりですが、本作を観ている途中に上映トラブルがあって、途中まで観ていたのにまた最初っから観る事になってしまい、これが私初めての体験型タイムループアトラクションとなったことを書き添えて筆を置きます。


All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)
桜坂 洋 安倍 吉俊

時砂の王 (ハヤカワ文庫JA) All You Need Is Kill 2 (ジャンプコミックス) All You Need Is Kill (JUMP j BOOKS) All You Need Is Kill 紫色のクオリア (電撃文庫)

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