ブラジルW杯:仏FWベンゼマ できることは点を取ること
毎日新聞 2014年07月05日 14時10分(最終更新 07月06日 12時03分)
フランスのFW、カルム・ベンゼマ(26)は教えてくれる。エースストライカーが母国のためにできることはただ一つ。点を取る、それだけで十分だ。
北アフリカ・アルジェリア系移民のベンゼマは、試合前に演奏される国歌を歌わない。昨年、その態度が侮辱的だと非難されて論争になったが、本人は意に介さなかった。仏ラジオ局の取材にこう答えている。
「私は代表チームを愛している。疑問を挟む余地などない。代表のためにプレーできるのは夢のようだが、だからといって歌うことを強制される筋合いはない」
国歌「ラ・マルセイエーズ」は仏革命のさなかに作られた軍歌。歌詞が荒々しい。7番まであるうち、試合前に歌われる1番はこんな内容だ。
「祖国の子らよ立ち上がれ、戦いの日はやってきた。(略)前進、前進、汚れた血が我らが進む道をぬらす」
ベンゼマと同じアルジェリア系移民で、仏サッカー界の英雄であるジダンも国歌は歌わなかったという。アルジェリアはフランスに侵略され、植民地化された歴史がある。
4日のドイツ戦でも国歌の演奏中、ベンゼマは黙って一点を見つめていた。この試合でゴールはなく、フランスは敗退したが、大会を通じチーム最多の3得点を挙げた。責任を果たしたエースストライカーを「侮辱的」とさげすむ者は、もういないはずだ。【朴鐘珠】