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浦和という街のクラブとサッカーへの関わり方を紹介!

 浦和とレッズほど、街とチームが一体化したクラブを探すことは、サッカーに限らず他のスポーツを含めても、日本においてはまず不可能といえるだろう。
それほどまでに、いま浦和とレッズの関係は良好にあり、理想的な関係を築いているといえる。
 レッズの存在を機に、浦和という土地を知った方も多いことだろう。93年のJリーグ開幕以降、レッズが浦和という街を全国に知らしめたことは疑いようのない事実であるし、一方で、そのレッズを支えているのが浦和という街ということもまたいえる。いまやJリーグ屈指の観客動員数を誇り、人気、実力ともにビッグクラブといえる存在になったレッズだが、それも地元の熱狂的な支援があってのこと。両者の関係は、もはや切っても切れない強い糸で結ばれている。
 それは2001年5月、レッズのホームタウンが旧浦和市、旧与野市、旧大宮市の合併によりできた「さいたま市」に変更になったものの(2005年4月には旧岩槻市も編入)、それまでの「浦和」という名称をそのまま使用していることからもうかがえる。レッズがどれだけ全国区になろうとも、アジアから世界へ羽ばたこうとも、原点は浦和ということなのだろう。

 もちろん、浦和にレッズが受け入れられたのにはいくつかの理由がある。その昔、サッカーといえば、静岡、広島と並び埼玉が御三家と呼ばれており、その埼玉の中心にあったのが浦和だったのだ。古くは埼玉師範学校でサッカーが始まったのは、明治41年(1908年)のことという。これは全国でもっとも早かったとのことで、ここを出た人々によって埼玉にサッカーが広められたのである。
 そして、サッカー王国・埼玉を最も印象づけたのは、高校サッカー選手権での浦和勢の活躍である。1937年に埼玉県師範学校が始めて全国大会を制すと、その後も県立浦和高校が3回、市立浦和高校が4回、浦和西高校が1回、浦和南高校が3回と浦和勢だけで12回もの全国制覇を達成するなど「浦和を制するものは全国を制す」とまで言われたほどだった。それだけに、元々浦和には潜在的にサッカーが根付いていたということなのだ。ちなみに現在の浦和レッズのエンブレムをよく見ると、上部に建物が描かれているのだが、それは鳳翔閣という埼玉師範学校の建物なのだ。

 また、1970年には高校サッカー界で一時代を築いた浦和南高校をモデルにした「赤き血のイレブン」という物語がアニメ化されるなど、サッカーブームが訪れる土台は確実にあったといえるだろう(「赤き血のイレブン」の主人公、玉井は浦和南のエースとして活躍した後に古河電工サッカー部で選手としてプレーした永井良和氏がモデルとされており、永井氏は現在、浦和レッズレディースの監督を務めている)。

 それから、レッズにとっては日本最大のサッカー専用スタジアムである埼玉スタジアムが浦和にできたことも、クラブが発展を遂げるうえで幸運だったといえるだろう。それまでの駒場スタジアム(2万1500人収容)から2003年以後は埼玉スタジアム(6万3700人収容)との併用となり、いまではホームゲームのほとんどが埼玉スタジアムで行なわれている。このことは、入場料収入が売り上げの大きな割合を占めているクラブにおいて、ひとつの転機となったはずだ。そういう意味でレッズが進化を遂げる過程で、多くのサポーターができる基盤、そのサポーターの受け皿となるスタジアムを用意していた浦和との関わりは決して小さくなかったといえる。

 そして、レッズはいま、その浦和への恩返しという意味で、地域への貢献ということも忘れていない。主なものとして、2003年にスタートした地元の小学生を対象にしたハートフルクラブの運営がある。この活動では元日本代表の落合弘氏がキャプテンを務め、レッズOBの杉山弘一氏や土橋正樹氏らのコーチのもと、サッカーを楽しむことを目的としたスクールが行なわれている。
 レッズランドの建設も地域貢献へのひとつ。さいたま市桜区にある14万平方メートルの敷地にはサッカー場、フットサル場、テニス場、野球場、ラグビー場、サイクリングコースなどがあり、地域の人々のよき交流の場として機能している。
施設は一般に開放されており、レッズOBによるフットサル教室や少年サッカー教室が随時行なわれている。まさに地域に根ざしたヨーロッパ型の総合スポーツクラブを目指した、ひとつの姿がそこにあるといえるだろう。

 古くは旧中仙道の宿場町として栄え、郷土の文化を大切に育んできた街・浦和は、埼玉の行政の中心であり県庁も置かれる文教都市である。その玄関口ともいえるJR浦和駅に降りれば、駅前には「サッカー王国・埼玉へようこそ」の看板の文字。さらには、京浜東北線が停発車するホーム1番線(東京方面行き)では、電車の発車メロディとしてレッズのオフィシャルサポーターソング「Keep On Rising」が聞こえてくる(埼玉スタジアムの最寄り駅である浦和美園駅でも試合の日に限り同曲を利用している)。
 レッズの試合がある際には静かな街が一気にヒートアップ。レッズと浦和はいま、そんな幸福な関係にあるのである。

Reported by 栗原正夫


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