政治・行政
集団的自衛権行使容認 思い複雑「基地の街」 横須賀の市民団体、政府を批判
解釈改憲による集団的自衛権の行使容認が1日に閣議決定され、自衛隊基地と米軍基地のある「基地の街・ヨコスカ」でも、賛否さまざまな思いが交錯した。
「訓練するだけ」自衛隊員
「憲法の中でも9条は要。解釈変更を閣議決定だけで決めるのは、民主主義の社会ではあり得ない。国際社会からも非難されている」。1日夕、京急線汐入駅(横須賀市汐入町2丁目)前で抗議演説を行った「横須賀市民九条の会」の岸牧子共同代表は、政府を厳しく批判した。
27市民団体が連携して集団自衛権の行使容認に反対し、横須賀市議会が国会と政府に意見書を出すよう要請した請願書は先月末の本会議で否決された。与党協議のみで閣議決定した政府の判断に納得できず、否決後も連携を続け、反対を訴えている。
憲法解釈の変更により、日本が攻撃を受けていなくても、密接な関係にある他国が攻撃された場合に自衛隊が一緒に反撃できるようになる。海外派遣などで今までより危険度が増すことを踏まえ、元海上自衛官は「実際に危険な地域に行く段階になると、辞める隊員が出てくるかもしれない」と懸念した。一方、現役自衛官は「集団的自衛権が決まれば、攻撃を受ける可能性はある。だが、自分たちは訓練をするだけだ」と受け止める。
賛否両論が渦巻く中、特に心配しながら経過を見守るのが自衛隊員らの家族だ。艦船に乗る海自隊員を夫に持つ女性は、「戦争は起こらないと願っているが、そういう状況になってみないと想像しにくい」。実感に乏しいのが現実だ。食卓では極力そうした話題を避けてきた。夫自身も「基地内でも(集団的自衛権について)『あまりしゃべるな』という雰囲気があった」と漏らしたという。
親族に自衛隊員がいる女性は「あちこちで難しい問題がある今、集団的自衛権の行使容認が加わると、さらに難しい事態になると思う。日本が攻撃されそうなとき、米軍は守ってくれないという不安もある。日本はこれまでの立場を貫いた方がいい」と主張した。
安全保障政策の大きな転換点となったこの日、吉田雄人市長は「国会の場において、自衛隊法の改正をはじめとする必要な法整備に関する国民的議論が始まると承知しているが、自衛隊施設、米海軍基地が所在する地元市長として、その動向についてしっかりと注視していきたい」との文書コメントを出した。
【神奈川新聞】