東富士演習場での自衛隊の演習(2012年8月) Associated Press

 日本政府が集団的自衛権の行使容認のため憲法解釈を変更したことについて、韓国では日本の軍事化の始まりとなりかねないと懸念する声が強い。また、米国がなぜこれを支持したのか腑に落ちないとする向きも多い。

 米国は、日本の集団的自衛権の行使容認について韓国や北東アジア全体の防衛のために必要不可欠なものだとして支持している。その理由は以下の通りだ。

 米国は、北朝鮮が韓国を攻撃した場合いかなる攻撃でも韓国を防衛するが、北朝鮮の韓国侵攻を阻止することと、阻止が失敗し北朝鮮が侵攻した場合これを撃退することに特に関心を払っている。米国が北朝鮮の侵攻から韓国を防衛することになった場合、米国は韓国に軍を派遣し、北朝鮮に対する軍事作戦を実施しなければならない。

 米国は、大量の兵力や装備を韓国に送り込む必要が出てこよう。兵員数はイラクに投入にした数の2倍にもなる。米国は、そうした派遣を支援するため日本にある多くの空軍基地や港湾を利用する計画である。というのも、韓国にある空軍基地や港湾は限られており、また韓国にある基地は北朝鮮の攻撃に対しぜい弱だからである。その見返りに、米軍は韓国の戦争地域から日本の民間人を避難させることになろう。

 日本の憲法では厳密に解釈すれば、これまでであれば日本の基地からの米軍派遣は認められてなかっただろう。なぜならば、日本を防衛するためのものではないからだ。そのような場合、日本の市民の中から日本政府を訴え、米軍による日本の基地利用に対する差し止め命令を求める動きが出ていただろう。

 そうした事態は、特に北朝鮮が日本に対し米軍を支援しないよう強要しようとしたならば、現実のものとなっていただろう。例えば、米軍が日本の基地を使用すれば、日本は北朝鮮軍の標的になる、と北朝鮮が警告していた場合である。

 加えて、米軍は韓国にある空軍基地能力では、北朝鮮に対する空爆など必要な航空作戦をすべて実施するには不十分であり、日本にある基地を利用して北朝鮮への攻撃に踏み切ることを望んだだろう。日本が集団的自衛権の行使を容認したことで、韓国の防衛に必要不可欠なこうした米軍の行動は認められることになろう。

 日米とも過去の歴史を踏まえ、南北朝鮮で紛争が起きた場合、日本の自衛隊を朝鮮半島に派遣することは想定していないだろう。だがそれでも、自衛隊は支援が可能だ。

 例えば、海上自衛隊は北朝鮮船舶が大量破壊兵器などを積載している場合には、臨検してこれら兵器を破壊するかもしれない。押収されなかった武器は北朝鮮の特殊部隊に引き渡され韓国向けに使われたり、テロ・グループに売却されて日本や米国などに対して使用されたりする可能性がある。海上自衛隊はまた、難民を乗せた船舶を臨検し、人道支援を提供するかもしれない。

 米韓の海軍では、武器を積載できる漁船を含め北朝鮮の船舶すべてには対処できない。海上自衛隊はかなりの艦船を所有しており、それらは主として日本海側に配置されている。したがって、北朝鮮が韓国に侵攻した場合には素早く行動を開始できるだろう。

 要するに、集団的自衛権の行使容認により、日本は韓国、さらには東アジア地域の防衛を支援する責任を担うことになるのだ。

 筆者のブルース・ベネット氏はランド研究所の上席軍事アナリスト(北東アジア軍事問題担当)。

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