JICAの支援で建設された小学校の強靭(きょうじん)性を実感-台風ヨランダの被害から-
2013年11月8日、観測史上最大級の台風30号「ハイヤン」(フィリピン名ヨランダ)がフィリピンを襲いました。中でもレイテ島、サマール島が属する東ビサヤ地域は、強風や高潮により甚大な被害を受けました。
JICAは東ビサヤ地域で長年にわたって学校建設を支援しており、無償資金協力(注)で建設された小学校は約100校に上ります。これらの学校の校舎は1980年代に多発した台風による被害を踏まえて、台風にも耐えうる構造として建てられたものです。台風ヨランダ発生直後の11月末、JICAフィリピン事務所はこれらの学校の被害状況を調査するため、レイテ島やサマール島で約20校の現地視察を行いました。
視察の結果、強風の被害を受けた地域では、屋根が吹き飛び、建物の壁が崩れるなど、大きな損傷を受けている校舎が多くあったにもかかわらず、JICAの無償資金協力で建設された校舎は、ドアノブやよろい戸、天井仕上げ材などに損傷を受けているだけで、壁や屋根など建物そのものへの被害は、ほとんど確認されませんでした。災害直後は一時的に地域住民が寝泊まりするなど、避難所としても重宝された、敷地内で唯一屋根が残った校舎は、JICAが支援したものでした。
無償資金協力で建てられた校舎は「JICAビルディング」の愛称で現地の人々に認識されています。JICA事務所による視察の際も、校長や現地の人々から「JICAビルディングのおかげで避難できた」「とても強い建物だ。本当に驚いた」と声を掛けられ、日本の協力が被災地の住民の助けとなったことを肌で感じました。
耐久性に優れた材料の使用、屋根固定の強化策を講じていることなど、無償資金協力で支援した校舎が高い強靭(きょうじん)性を生んだ技術的な理由は幾つかあります。ただ、一番の理由は、建物を作る際にきちんとモニタリングをし、求められた基準のものを作るという、日本のモノづくりに対する姿勢だと思います。
台風ヨランダ発生後、JICAが支援した学校校舎の強靭性はフィリピン政府内でも高く評価され、日本の技術やモノづくりへの姿勢は改めて評価されています。今後も日本の技術や経験を被災地の復興に役に立てていきたいと感じています。
(注)開発途上国などに対し返済の義務を課さない資金協力のこと。開発途上国の経済社会開発に役立つ計画に必要な資機材、設備などを調達する資金を供与する。
サマール島のバナハオ小学校。強風による被害で跡形もない校舎
バナハオ小学校内でも大きな被害がなかった「JICAビルディング」
サマール島のラワアン工芸校。左奥の校舎は屋根が残った
レイテ島のナガナガ小学校。避難所として活用された校舎