2014-07-07
■[話題]斉藤淳『10歳から身につく問い、考え、表現する力』

教養(リベラル・アーツ)とは何か、そしてそれをどのように取得していくのか。斉藤さんがイェール大学で学んだ成果を、前著の英語学習から、さらに教養一般まで拡張して論じた好著である。
特に読書のすすめと読書ノートのノウハウは個人的にも実践しているものに共通していて賛同するところが多であった。また算数・数学教育の「減反政策」などの指摘も説得的な議論だ。
本書を読むと日本の教育がいつの間にか、間違った形でグローバル化や専門教育をとらえてしまっていることに気が付くだろう。本書は10歳からの教育だけに利用できるだけではなく、教養を身につけたい、また教養をどのように学生に教えるか、そのような問題に直面した人たちに大きく役立つだろう。
10歳から身につく 問い、考え、表現する力―僕がイェール大で学び、教えたいこと (NHK出版新書 439)
- 作者: 斉藤淳
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2014/07/09
- メディア: 新書
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■[経済]村上尚己『インフレ貧乏にならないための資産防衛術』

本書は題名だけみると資産運用の入門書のように思えてしまうが、中味は最も最新で信頼できるアベノミクスの2012年から今日までに至る評価を総合的に分析し、またそれをもとに個々人がどのように資産を考えていくべきかを丁寧に議論した本である。
いわゆる「市場関係者」という人たちがいるが、これは特定のメディアが特定で数少ない人たちの意見を総称して言っているだけにすぎない。簡単にいうと「市場」(価格機構)を代表する意見にはまったく思えない。村上さんはこのいわゆる「市場関係者」の中では孤高の位置にあるエコノミストのひとりだ。本書でもとりあげられた2013年の日銀総裁選出の「市場関係者」へのアンケート調査で、ただひとり岩田規久男先生(現在は副総裁)を推していることからもそのことは明瞭だ。
アベノミクスの第一の矢の効果を積極的に評価し、他方で第二の矢(財政政策)と第三の矢(成長戦略)については不十分で、それらの欠陥が消費税増税とともにアベノミクスを不安定化させている、という見立てには僕も大いに賛成だ。
日本のエコノミストにしては極めてまれだが、雇用環境や為替相場、財政状況、そしてインフレ時代の資産の運用までとても包括的に解説していることも本書の利点である。
インフレ時代に自分たちの財産をどう守るのか、そのために知るべき必要最低限でしかも重要な知識を本書は与えてくれる。
- 作者: 村上尚己
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2014/06/20
- メディア: 単行本
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