2014年07月04日

世界一大きい花の臭いの話

筑波実験植物園のオオショクダイコンニャクが先日開花したそうです。
なんじゃそりゃと思うかもしれませんが、この熱帯雨林原産の花、地面に出てる部分がほぼ花(正確には小さい花の集合体)で、その高さは3メートルにもなるという世界最大の花なのです。しかもこれ、花が咲くこと自体が極めてまれな上に、咲いて2日目には閉じ始めるというシロモノなので、もうレア中のレアな花。そのため開花の度にこの花を一目見ようと大量に人が押し寄せるそうですが、週末に合わせて開花するとはずいぶん空気の読めてる花のようです(ぉ

ショクダイオオコンニャク.jpg
写真はwikipediaから

そしてこの花、巨大でレアなこと以外にも有名なことがあります。それは「非常に臭い」ということ。開花時から肉の腐ったような強烈なにおいを発するため、その変な形と相まって『世界で最も醜い花』にも認定されてるそうです。

これだけ強烈なにおいだといったいどういう成分が含まれてるのか気になってきますが、何せ全然咲かない上にあっという間にしぼんでしまうので調査も大変です。ですが、それを測って分析した研究があります。



Chemical Indentity of a Rotting Animal-LikeOdor Emitting from the Inflorescence of the Titan Aru (Amorphophallus titanum)
Touhara, K. et al. Biosci. Biotechnol. Biochem. 2010, 74, 2550-2554


世界最大級の花ショクダイオオコンニャクが放つ特異臭気成分を特定(東京大学大学院 農学生命科学研究科)


モノの臭いは単一成分ではなく、さまざまな成分の混ざりの結果で決まってくるのですが、完全開花時のショクダイオオコンニャクからは特にジメチルトリスルフィドが大きく寄与していることが示されました。ほかにも色々なチオールなどの硫黄成分や低級脂肪酸、アルデヒドなども含まれています。化学屋さんならわかるでしょうがいかにも嫌な臭いのしそうな成分だらけです('A`)

燭台大こんにゃく匂い.jpg

面白いのがこのジメチルトリスルフィド、実は浸潤性がんの患部から放出される臭い同じ成分で、ショクダイオオコンニャクの臭いもこれと非常に似たパターンを示すそうです。なんか犬がやけに吠えてくるなあと思ったらガンが見つかりました、なんてエピソードどっかで聞いたことありますが、こういう成分を感知した結果なんでしょうかねえこの話。
今後のために(?)、ぜひ一度この花の臭いを嗅いでおきたいのですがまにあうかなあ(´・ω・`)


ちなみに個人的に臭い南国の物というとドリアンを思い浮かべるんですが、こちらは2日でなくなることもないしその辺にいくらでもあるので色々成分の分析はされており、低級カルボン酸や様々な硫黄化合物の他に、カラメル様の臭い成分でもあるフラノン類が混ざっていることもわかっています。めっちゃ臭いやつなのにカラメルの臭いが混ざってるとはほんと匂いって不思議です。

Characterization of the Major Odor-Active Compounds in Thai Durian (Durio zibethinus L. 'Monthong') by Aroma Extract Dilution Analysis and Headspace Gas Chromatography−Olfactometry
Steinhaus, M. et al. J. Agric. Food Chem. 2012, 60, 11253–11262


ドリアン匂い.jpg

と、ショクダイオオコンニャクが開花したっていうので大慌ての手抜き超突貫で書いてみました。ちなみに東京都小石川植物園にもこのショクダイオオコンニャクがあるらしく、それだけでなく麻薬が取れちゃうケシの栽培もしています。普段は2重柵に覆われていますが、4,5月の開花の時期になると外側のフェンスを解放して近くでケシの花畑を鑑賞することができ、きれいでうっとりした気分になります(おまわりさんこの人です

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posted by 樹 at 09:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 生き物の化学物質 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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